第708回
成功すると人はなぜグルメとワインに奔るのか
職業料理評論家、職業フード・レストランジャーナリストたちが
雑誌や出版本で飲食店の「宣伝」や「似非評論」をしているのは
なんとなくわかります。
生業としての活動ですから、読者や一般客を裏切って、
料理人や飲食店経営者に感情移入して記事を書いている事実も、
食べていくためには仕方がない、
とその立場は賛同できませんが理解はしております。
しかし、本業の稼ぎでまったく生活には苦労していないと思われる、
いわゆる「業界人」や「文化人」が読者や一般客側に軸足を置かず、
料理人や飲食店経営者に感情移入してしまう姿が、
ここ数年目立ちます。
放送作家という肩書きの人がその最たるものでしょう。
秋元康氏、小山薫堂氏、そして新参ではすずきB氏などなど。
TV露出も派手ですが、その他雑誌の連載、
単行本出版といった副業がかなりお盛んです。
彼らは若くしてその業界で
一応成功したと言われている人たちのようですが、
成功した人としては、スポーツ選手や芸能人でも
グルメ、ワイン通と言われている人は多いようです。
脂ぎっていてTVの出演をみただけで食欲が落ちる中尾彬氏、
実際は態度がでかいという噂で
あまり詳しくないのではないと思われる
自称ワイン通の辰巳琢郎氏、
無理に寿司屋でワインを飲んでワイン通を気取っている江川卓氏、
ほんとにワインわかっているのか桑田真澄氏などなど。
つまり、一発成功してしまうと、
今までの生活環境とは打って変わって
グルメ、ワイン通にすぐ変身できる、
またはそう世間が簡単に納得してしまうほど、
実は底が浅い趣味・嗜好なのかもしれません。
本当は料理の味がわかるかかどうか疑問の人も、
有名料理評論家や
フード・レストランジャーナリストたちと群れを成して
店訪問を繰り返し、
料理人と親しくなってツーショット写真を掲載できれば、
今日からグルメ、食通となれるのです。
間違っても、店や料理人に問題提起せず、
おいしくないとは言わず、ただただ迎合すればいいのです。
これは業界人、芸能人と
料理人との利害が一致することから生まれる弊害といえるでしょう。
多々ある資金の必要な趣味の中で、
飲食はそれほどの費用を必要とされません。
高級外車、高級機械式時計などの1台分で
何十、何百回と飲食ができます。
世には、はるかにお金のかかる趣味が沢山あるのですが、
手っ取り早く世間に認められる趣味とういうか魅力的な呼び名が
「食通」で、彼らはこれに魅力を感じていると考えます。
タニマチにタダで連れて行かれることも多いでしょうし。
本業以外に飲食店に詳しいといえばちょっとよい格好ができる、
また料理人は彼らを宣伝に使いたい、
といった思惑がそこに共存すると考えます。
ワインは凝りだすと際限なくなりますが、
適度に抑えてたまに飲む有名ワインを大きく宣伝しておけば、
ワイン通と人は勘違いするでしょう。
本来、ワインは仲間内やワイン会で出会った人には
「飲んだワイン自慢」をするでしょうが、
雑誌やTV、ましてや素人が
ブログで公に自慢するものではないと思います。
「食通」、「ワイン通」、どちらもたいした知識や経験もいらず、
(友里征耶もその中の一人だと言われるでしょうけど)
余裕がある人には簡単に参入できる分野、
そして、料理人と親しくなり、
ただただ褒めまくればその地位を得られてしまうというのが、
今の貧困なグルメ業界であると考えます。
また、日本ソムリエ協会が認めている
名誉ソムリエのメンバーを見れば、
いかにワイン業界も軽いかということも合わせてわかると思います。
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