第571回
緊張感を要求する先を間違えている
私は鮨屋などによく見られる、
客に緊張感を要求する営業はいかがなものかと主張しています。
取り巻きが日本一と持ち上げている鮨屋が代表的ですが、
ゴッドハンドとまで持ち上げられて、
人生経験豊富なお年なのに勘違いしてしまったのでしょうか、
親子で傲岸不遜な態度で
客の悪口を言っているところを聞いた事があります。
世間の常識で言えば、
目の前の客にそのようなところを見られ聞かれることは、
言っている本人の人柄を自ら落とす行為であり
避けるべきものですが、
肝心の料理人に緊張感がないので
このような世間常識ではまずであろう態度がでてしまうようです。
私は言い続けます。
客に緊張感を要求する前に、料理人が客前でもっと緊張しろと。
もっと真剣に振舞えと。
料理評論家やフード・レストランジャーナリストたちが
視聴率を上げる事しか考えていない
TV局的な手法というのでしょうか、
煽ったほうが
視聴者や読者受けするという法則の元でやっているだけなので
軽く受け流せばいいのですが、
料理人本人が一番その気になってしまっているのですから滑稽です。
しかし、この緊張感は飲食店業界だけではなく
他の業界でも間違った層へ要求し、
持たなければならない肝心の人が持っていないのが現状のようです。
水に落ちた犬のごとく
今叩かれまくっている西武グループの堤元会長。
従業員や社員に必要以上の緊張感を絶えず要求した割に、
長年、会社所有の建屋に親しい女性を住まわせやりたい放題、
以前のコラムで納税の疑問を書きましたが、
トップに緊張感ないがために脇の甘さが
今の株問題に対する稚拙な対応となってしまったのでしょう。
大会社、特に60歳を超える
いわゆるお年より経営者によく見られる傾向ですが、
滅私奉公(といっても会社にではなく
引き上げてくれる上司に対して)して
ようやく役員なりトップになった経営者たちは緊張感をなくします。
なにも会社ではなく
引き上げてくれた上司に貢献しただけかもしれない実績なのに、
一日でも長くこの地位を維持したい、
またその後も今の待遇や収入を維持したいと思い続けるようです。
社員は上を見て緊張し続けていますが、
上層部は世間を騒がす刑事問題などの騒動を起こした場合を除き、
業績その他の不振ではあまり責任を取りません。
重要な会社方針、判断の間違えで売上不振、
損害をこうむった場合でも、遡ってその判断をした人、
認可した人の責任を追及せず、
よって経営に失敗した人が未だに相談役や顧問として君臨して
高給を得ている不思議な光景が日本では良く見られます。
人に責任をとらせると、自分もこの先取らされるのでしない、
といういかにも日本的、護送船団てきな考え方。
まったく緊張感ない経営陣としかいいようがない大会社が
結構多いものです。
美人画商に数億も会社の金を払って、
ガラクタをつかまされていた実力会長など
どこまでその責任を追及できるか。
小規模な親会社の株を
イケイケの若人に大量に取得されて反発している会長。
今まで緊張感なくながく君臨してきた多選の典型例の人ですが、
時間外取引が法の盲点をついた不明瞭なものと反発し、
自らも「新株予約権」なる不明瞭な対抗策にでてきました。
でも、時間外取引などという名で損をしていますが、
他の株主には不利益になっておりません。取引価格は遵法です。
市場でも、「クロス取引」といって
大量売買したいがそのまま出したら影響が大きい場合、
あらかじめ売り買いを決めて
一気にやってしまう方法もあるから同じことなのです。
今回は、ライブドアに売却した人の中に、
政府の諮問機関や協議会に名を連ねる有名実業家や
有名IT事業家がいたとの噂があります。
表にでたくなかったので、時間外にしたのでしょう。
しかし、「新株予約権」は株が薄まるので
一般株主には損害を受ける可能性があります。
代表者をチェックするのが取締り会、
取締りをチェックするのは監査役で、
最終的には株主(株主総会)がチェックするはずです。
前にも書きましたが、
役員はあくまで株主総会から経営を委託されているだけです。
ですから、この「新株予約権」を乱用すると、
チェックされなければならない取締役を
生き延びさせてしまう可能性があります。
問題を起こしたり無能な役員たちでも、
変なスポンサーを見つけて
仕事上便宜をはかる見返りに株を引き受けてもらえれば、
既存の株主の影響力を廃して延命できてしまうからです。
抜け穴だ、不明瞭だと政治家たちも言っていますが、
私に言わせると、政治資金規正法や、閣僚の資産発表
(普通預金は公表しなくていいので、寸前で皆定期を解約する)など
「抜け穴」を造っているのは
テメーたちのほうではないかと言いたいですね。。
これをはっきり言い返す人やマスコミが少ない、
居ないのが残念です。
田中角栄金脈問題を立花氏が初めて指摘、発表した際、
「そんなことは我々はとうに知っていた」
と番記者などが言い放ったのは有名な話ですから、
期待しても無理なのでしょうけど。
権力を持つものはその大きさに比例して
より緊張感を持ち続けなければいけないはずですが、
日本の最高権力者でさえパフォーマンスに明け暮れ、
保身行為以外まったく緊張感をみることができませんから、
大会社を含めて経営陣、
ましてや料理人に緊張感を求めても無理なのかもしれません。
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