| 第527回多皿コースは失敗ではないか、ジョエル・ロブション 2
 
 タイユバンから譲り受けたのでしょうか、カリスマ造り手のレアワインが相場より安く、
 また有名造り手の古酒が以前と同じような価格でありました。
 決して絶対価格が安いわけではありませんが、
 この手のワイン好きならば
 つい無理してでも飲みたくなるストックと価格に驚きです。
 よってこの店ではボルドーより
 ブルゴーニュを頼む方がいいでしょう。
 我々もブルゴーニュを主体に3本ほど飲んだのですが、
 何の気なしにコルクを確認して唖然。
 ベテランソムリエが抜栓したコルクだというのに、
 3本ともソムリエナイフのスクリューが
 コルクを縦に貫通していたのです。
 抜栓時に一番気をつけることは、
 コルクの破片が瓶内に落ちないように気を使うことです。
 コルクの下面をスクリューが貫通するという事は、
 その際の破片や粉がワインに落ちる危険があります。
 思わずツレと顔を見合わせてしまいました。
 粗探しで申し訳ないのですが、食器やグラスは新しく揃えたとの説明でしたが、
 クリストフルのカトラリー、すべて傷がかなりついていました。
 これだけは中古品なのでしょうか。
 料理は、前菜が8皿、魚が2皿、肉が4皿にデザートが3皿と
 計17皿の正に多皿料理。
 しかし、エルブジ料理とは違って、奇抜な実験的料理ではなく、
 今までのロブションのスペシャリテなどを小皿にした
 オーソドックスなものでした。
 ただし、味のインパクトを求めすぎるからか、
 ほとんどの料理が
 フォアグラとトリュフに頼りすぎた調理となっており、
 一品一品はおいしいのですが、
 続けて味わうと飽きと胸焼けを感じてしまうようになります。
 特に有名なカリフラワーのクリームに甲殻類のジュレは、以前に増して味が強くなりすぎた、相当しつこいもの。
 肉類もフォアグラ、うずら、牛肉、仔羊と
 小ポーションといえども4種が登場。
 他に海胆フラン、ちりめんキャベツなどまず多皿ありきで、
 中身の食材を若干変更して
 皿数を稼いだ元スペシャリテもありました。
 ほとんどの料理が味濃くお腹にもたれるもので、これはジャイアンツ打線のようなもの。
 4番打者(スペシャリテ)ばかり揃えて17皿、
 コース全体のメリハリがなく、まとまりを感じないのです。
 一皿毎の完成度は高いのですが、トータルのバランスが悪く、
 しかも多皿ですからしつこい味だけが印象に残って、
 一皿毎のイメージが思い出されません。
 オープン当初はロブションが詰めているようですが、
 現場のシェフは28歳と才能はありそうな若手。
 私は皿数をノーマルにして、
 想像性あるスペシャリテを新たに考え出した方が良いと考えます。
 エルブジもそうですが、
 多皿料理では内容をそう頻繁に変更できません。
 リピーターより一見客が主体になりますから、
 店のレベルも向上するとは思えないのです。
 かくして、コースが破格の3万5千円ですから、それに見合うワインを飲んでしまうと
 一人6万円を超えてしまいます。
 これではたとえ料理内容が変わったとしても、
 簡単にリピートできません。
 <結論>経営者の方針によって、
 料理人の才能が左右されてしまうことを証明した典型例の店。
 一皿毎はいいのだが、コンセプトの間違いからか、
 トータルでは首を捻る食後感となりました。
 しかし、ワゴンでサービスされる10種近くのパンは絶品。
 なんとか価格を含め営業方針を変更してもらいたいものです。
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