第523回
友里征耶と客を斬る その10
個人的不愉快体験から批判している
東京コンシェルジュからもう一つ、厳しいご指摘がありました。
田中康夫氏と同様、
個人的不愉快体験から帰納法的に店を批評している部分がある。
「オレがこんなイヤな目に遭ったんだから、
みんなもイヤな目に遭うはずだ」
というリクツで店をけなしていましたが、
読者の多くは
「あんたが嫌なヤツだから嫌な目に遭うだけで、
普通の人は大丈夫だよ」
あの田中康夫氏を引き合いに出しいただくとは大変光栄です。
確かに私もそう思います。
現に、「いまどき真っ当な料理店」などを読んだ時、
その方向性には納得しましたが、
それは客側にも問題があったのではないか、と思ったものです。
そういう意味では、
よく友里が「店に嫌われている」、「いやな客」
と風評されている理由がわかります。
そこで拙著2冊を読み返してみました。
完全に第三者的に判断するのは無理かもしれませんが、
我々側が発端で揉めたのは
「レトワール」くらいしかないと思います。
この件は色々物議をかもした事件で、
友里=嫌な客、禁煙の店を無理にねじ込んでタバコを吸った、
と批判されているものです。
詳細をあそこまで書くかどうか当初迷ったのですが、
どうせ書くならばすべてを書いたほうがいいだろうと判断しました。
部分的にとられてよく批判されますが、
一番悪かったのは連れの若社長。
人間的にも最低でしたが、
ただの異業種交流で知り合っただけで親しくなく、
その暴挙を止められなかった友里も
ホストとしての指導力がなかったので悪い。
それは文中でも再三述べています。
問題提起は、それが我々側が悪いとの前提でも、
果たしてあのシェフがとった行動が
客商売として正しかったかどうか、というものです。
まったく客と揉め事がない店などないでしょう。
どちらが原因かは別にして、
どうやってお互いを理解して揉め事を円満に収束するか、
その大人の対応が店と客に必要だと考えます。
結構その後も原因は違いますが客側の不満を色々耳にしますから、
それなりに店にも問題あったと今でも私は確信しています。
その他インパクトを与えた、「かどわき」の追い出し事件。
確かに私の不愉快体験ですが、
これは他の方からの体験でも確認しており
私たちだけの問題ではありませんでした。
「幸村」のカード手数料問題。
文句をつけたのは私だけのようですが、
手数料を払った客は沢山居ます。
その言い訳というかカード会社も呆れた店側の詭弁から、
料理人の性格を問題にしました。
性格というか考え方に問題のある人は、
他の場面でも同じような自己中心的な行動を取るものと考えて
敢えて書いたのです。
ソムリエがデキャンタをシェイクした、
泡物の抜栓でビショビショになったなどは、
その人の技量ややり方の問題ですから、
これは誰でもその後も遭遇することだと思います。
2冊目からは、
個別の目だった描写はなるべく控えるようにしました。
いくらか店側では名が売れてしまったので、
特定されてしまうのをおそれたのも理由の一つです。
ただ普通の人は気がつかない店側に仕草、
たまたま私が見つけてしまった問題点は書いています。
これは、私だけの不愉快体験ではなく、
他の方が気づかなかっただけのことですから。
色々言い訳的にもなりましたが、
そうは言ってもただの「不愉快体験談」は読んでいても
疑問に思う事がままあると思います。
今後は肝に銘じて、同じ不愉快体験を書くにしても、
より風刺を利かせる、面白みをもたせる、嫌味感を持たせない、
ように気を付け、
そして誰でもその不愉快体験を受ける可能性があるものだけを
取り上げることにしたいと考えます。
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