第436回
おいしいけど高すぎるよ、トトキ 1
銀座の正式店名「レディタン ザ・トトキ」というフレンチです。
旬が過ぎて今では注目度はなくなりましたが
銀座の名店「レカン」で長く料理長を務め、
昨年末に独立した十時シェフ。
名店在籍の後半は、
ほとんど雑誌で取り上げられなくなっていたのに、
独立した途端に多くの料理店情報雑誌に
名前と写真が載り続けてしまったのが不思議です。
料理の腕は変わらないはずですが、
この手の業界雑誌は移り気なようですね。
本当の料理人の実力や店のおいしさ、CPとは関係なく、
次から次へと他誌に負けないよう
新しいシェフ、店をラインナップしてくるのがお約束です。
しかしあの「てんぷら 近藤」と同じビルというのは、
イメージで損をすると私は考えます。
小洒落た新しいビルなのですが。
フレンチでは珍しい引き戸を開けると
相対で座れるカウンター席が12席あります。
シェフの手捌きが見られるこのスペースが一等地で、
更に店奥には10席のカウンターが続くのですが、
ここでは追廻し的なスタッフが前菜などを盛り付けているだけで、
前後左右のスペースに余裕がありません。
左利きの客では干渉してしまいそうですし、
後ろに立ったスタッフに監視されているようで落ち着きません。
隔離された部屋に4人掛けのテーブルが2卓ありますが、
カウンター席に比べて照明も暗く、
この店のコンセプトを考えたら避けるべきと考えます。
板目のカウンターには
ナイフスタンドにカトラリーがセットされています。
クリストフルの箸も用意され、
芸能人・業界人の隠れ家フレンチに見えてしまうのですが、
蕎麦やご飯物は出ませんので実際は必要がない、
正統派フレンチであります。
ドレスコードはありません。
タイなしは勿論、男性でもライブドアの堀江社長のように
カットソーだけでもオッケー、
入り口付近には場所柄同伴カップルも見受けられる
今旬な連日満席の人気店であります。
この店で一番の問題点はワインの値付けです。
あまりにも高いのです。
ノンヴィンのシャンパーニュが9千円から1万2千円。
「ロオジエ」でもこれほどしません。
95年のドンペリ3万円に驚き、
白ワインも2000年以降と若いもので1万円から2万円の範囲が主体で
怒りがこみ上げそうです。
ブルゴーニュでは、
せいぜい1級畑で村名や地方ワインも
この価格帯で目立つのですから怖い。
普通の値付け店の1.5倍はしています。
少なくとも他店では、村名なら1級畑へ、
1級畑ならば特級畑にアップグレードできる価格と考えます。
赤ワインでは、ボルドーがほとんどなく、
やはりたいした銘柄でないワインが1万円以上しています。
ブルゴーニュも30種類と
高額フレンチの位置づけの店にしてはストックがプアです。
赤の特級畑で有名な造り手のものは、
若くても4万円以上ださなければなりません。
しかし、ワインは金持ちか経費族しか飲むなという方針かと怒って、
他のお酒に逃げる事も難しい。
泡が半分もあり量が少ないビールが900円、シェリーが1500円、
ノンヴィングラスシャンパーニュが1800円と、
ある程度お酒に知識のある人は、
捨鉢にならなければお酒を飲む事ができません。
オーナーと言われている
十時氏の意向で利益を取りすぎているのか、
ソムリエの怠慢で高い仕入れになっているのか、
どちらにしてもワインに関しては
CP云々を考えることさえ無駄な店と言えるでしょう。
<明日に続く>
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