自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第371回
京都のクイーン アリスか、京都和久傳 2

料理は、昼が3675円、5250円、8400円の3コース。
夜は上2種だけとなります。
「和久傳」の看板で、
この安い値付けは確かに魅力的ではあるのですが、
この立地に対応する家賃、大箱経営では、
CPの良い料理を供する事が出来るほど
和食の世界は甘くはないと考えます。

ほとんどの客が、ご飯物として
鯖鮨など3種から選べる3675円のコースを選ぶ中、
我々は山本益博氏が絶賛していた「鯛の黒寿司」の入った
夜と同じ8400円にチャレンジ。
すべてのコースで、最初に竹酒を1杯無償で出して
女性客の心理を衝くパフォーマンス。
料理を食べる前に気を緩める戦略です。
先付けなどまずまずの皿が2品続きましたが、
お椀に位置するものはスープ皿で新筍に梅干入り。
(訪問時期は3月)
スープ皿は冷たく全体にも冷え目で、
出汁自体は悪くはなかったですが、ウケ狙いの梅干はミスマッチ、
サービス共々失敗でしょう。

イベリコ豚の炭火焼など、ついに和食の世界にまで
ブランドポークが押し寄せてきたかと驚きましたが、
薄い2切れが塩味強く、
主体であるお酒を飲まない女性客にはきついはず。
皿も温かくなく、肉は冷えておりました。

白アスパラは茹ですぎで食感悪く、
乗せられた鰹節に負けて食材の風味を感じません。
企画倒れの一品といえます。
醤油で焚いたから黒寿司というようですが、
このボロボロなご飯に質のよくない鯛の寿司を、
どう食べれば絶賛する事ができるのか私には不思議です。

夜でも1万円前後で終わると思いますが、
これを観光客相手に凄い「京料理」と刷り込むのは感心しません。

<結論>
このコンセプトの店で、傑出した和食が出てくるはずがない事は
食べる前にわかってしまう。
観光客相手の創作パフォーマンス料理と了解して
訪問する覚悟が必要です。
しかし、この見るからにわかりやすいコンセプトの店の料理を、
どうして絶賛する人がいるのか、私には理解できません。


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2004年7月20日(火)

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