第343回
ホテルの鉄板焼よりお得、銀座うかい亭
店名からは何料理かピンときませんが、
純和食というよりオジサン好みの鉄板焼きで売っている
接待系料理店であります。
雑誌などから内装などに予備知識はありましたが、
これほど浮世離れしているとは、想像の範囲を超えておりました。
スプーンとフォークを顔に見立てた
等身大の人形オブジェが入り口で出迎えてくれます。
幼い子供が喜びそうですが、何の意味があるのでしょうか。
奇を衒った仕掛けは、
民事再生法を適用された「青龍門」などを経営している
「ソーホーズ」を思い起こし、イメージダウンに繋がります。
アールヌーボー調というより、オリエンタルの雰囲気の内装。
この派手さが、なぜに鉄板焼きに必要なのか、
アンティーク物の装飾品も所狭しと、品なく並べられており、
成金趣味以外の何物でもありません。
カップルなど数人のグループは
中央の大きな円形カウンターで相席となりますが、
4〜5人以上のグループには、
セパレートされた半個室のカウンターが
いくつか用意されています。
接待や若い女性を連れた下心見え見えのオジサン以外に、
ファミリー向けにも対応しています。
この店は基本的にホテルの鉄板焼きと同じです。
コースが主体ですが、内装とは逆に価格設定は安い。
アミューズに魚介類の前菜、
スープに野菜と黒毛和牛150グラム、
そしてガーリックライスとホテルの鉄板焼のフルスペックで
1万2千円と2割は安い計算です。
本店でも絶賛されている
産地に拘った三戸の鮑の岩塩蒸しを加えてもコースは1万8千円。
下は1万円のコースから、
フォアグラ、オマール、鮑に締めは鯛茶と
満艦飾の豪華コースでも2万3千円と、
ホテルの割高鉄板焼きと比べるとかなりお得感があります。
可もなく不可もない前菜は有名ホテルと同じレベル。
拘ったという岩塩蒸し鮑(単品9千円)も
傑出した物を感じませんでしたし、
生産者名をつけたフォアグラ
(単品4800円、ガチョウです)というのは初めてでしたが、
ここまで拘っても私に驚きをもたらさなかったのは、
鉄板という調理法の限界からでしょうか。
肝心の牛ステーキですが、
料理人は頻繁に鉄板上の油を捨てていました。
ガーリックを炒めた油もすぐ捨ててしまい肉には使用しません。
私には暗に
鉄板焼きの不必要な油が料理には邪魔だ
と認めているように感じた次第です。
どうせ牛肉の持ち味を殺してしまうこの鉄板焼きという調理法、
パフォーマンスだけを期待するならば、
私は高いホテルの店に行くより
この「銀座うかい亭」をお勧めします。
ただしワインは高過ぎ。
ノンヴィンシャンパーニュが9千円を超えていますし、
90年代後半の2級、3級のボルドーが2万円前後、
ブルゴーニュにいたっては、
有名造り手のワインは小売の倍以上で
4万円を優に超えるものまでありました。
所詮鉄板焼きステーキ、油まみれの肉には、
一番安いハウスワイン(7千円)しか頼むものがありません。
<結論>
ホテルの店より油びちゃびちゃではないステーキ。
価格も抑えられているので、敢えて鉄板焼きを選ぶなら、
帝国、オークラなどへ行くよりCPは良いでしょう。
一番安いワインを頼んで一人2万円前後となります。
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