第337回
ここも過大評価、馳走琢
雑誌やガイド本で最近かなり取り上げられている、
昼は何回転もするほどの超人気、
夜も予約を入れ難いとの噂を聞きました。
前日までに8千円、1万円、1万2千円の
3種のコースの決定をしなければなりません。
価格差が2千円と差がないので
「鰻屋の松竹梅の定説」どおり
ほとんどの客が真ん中の1万円コースを頼むようですが、
食材、調理法の説明をせず、
どう判断してコースを決めろというのでしょうか。
主人に任せろ、と言いたいならば、
1種だけのお任せにするべきです。
せめて来店してから食材などの説明をうけて
コースを選べるようにしていただきたい。
仕入れの無駄というリスク逃れのため、
客側にだけリスクを押し付けるのは感心しません。
ビルの2階の小さなスペースに椅子席10〜12席、
カウンター4席を無理に詰め込んでいますから、
隣の会話が耳障りです。
客層は女性客だけのグループも目立ちます。
昼はその傾向がより顕著。
女性をターゲットにしているからでしょうか、
料理の味付けは良く言えば繊細、柔らかい、淡い、
はっきり言えば何の特徴もない出汁と感じます。
「東京最高のレストラン」では決して強すぎない、
ギリギリの部分で止めている、とありますが
私にはかなり手前で停車しているとしか思えません。
当時の最初の一品「水菜の御浸し」では、
薬味が不自然に利きすぎていて
同伴者ともども咽こんでしまいました。
後にも先にもインパクトがあったのはこの料理が最初で最後。
よくある「海鼠腸の茶碗蒸し」は
混ぜて食べるように言われましたが、
確かに出汁が薄すぎて海鼠腸の塩味がなければ満足しません。
このほかナマコが出てきてから
初めて前菜といわれる一皿が登場します。
紅蒟蒻、からすみ、エビ、すり身入りの玉子焼きなど
ごく一般的なもの。
ただし、小さな肝を1片のせた蒸し鮑が続くなど
質や量を問わなければ、
高級食材や珍味と言われるものを続けるのが
この店の特徴のようで、初心者には受けそうです。
茶碗蒸しで想像できましたが、
和食の表の看板である「お椀」はグジを使っていましたが
極めて凡庸。
運が悪かったようですが、
食べたら鱗が1片口に残った鯛、ホタテ、赤貝など造りの質も、
銀座で1万円なら仕方がないか、といったレベル。
決して傑出していません。
「鰆」の焼き物にしても火の通しすぎか妙にパサパサしており、
〆の「うずらの雑炊」も
肝心の鶉がシャイなのかなかなか見当たらず、
旨みも感じませんでした。
主人はお茶に凝っているそうで、
最後に「一保堂 煎り番茶」が出るのですが、
不調法な私には1袋300円のそのお茶の有難さ、
味が理解できません。
お酒の値付けも高い。
ただの純米「菊姫 山廃」が一合1800円は
ちょっと取りすぎでしょう。
銀座で1万円前後の価格設定と宣伝しながら、
実際は10%のサービス料を請求されるのを
これから訪問される方は念頭に置いてください。
<結論>
銀座で1万円の和食コースでは、
本当にこの店の料理が限界なのだろうか。
一品ごとの量は少ないが多皿攻撃で、お腹は満腹になりますが、
食材の質や出汁を考えると食後感はよくない。
過大評価、和食初心者向けと考えます。
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