第324回
固定費と客単価の関係 その1
最近はオーナーシェフの店との触れ込みで、
青山などの一等地に、
豪華な外観、厨房まわりを含めた過剰な設備投資、
そして大勢のスタッフを要した店が
何店か評判になっているようです。
レストランジャーナリストたちは、
ことさらホールやレストルームの
不必要とも思える設備や什器備品、
そしてホールより3倍広くとっているのか、
ホテルやグランメゾンを凌ぐ厨房を含めた豪華な設備、
そして有名スタッフをはじめ過剰かと思われる大所帯を
持て囃しています。
でもちょっと待ってください。
過剰な設備、シェフが心地よく仕事ができるのでしょうが
その広く贅沢なスペース、
有名店勤めをしていたマネージャクラスのスタッフ採用、
多勢の厨房・ホールのスタッフたちと、
これらはただではありません。
いわゆる「固定費」としてしっかり売価に転嫁されなければ、
営利を目的とした
「商業レストラン」としては成り立たないのです。
一般の事業体の経費は「固定費」と「変動費」に分類されます。
料理店でいいますと、
客がはいってもはいらなくても変わらず出ていく経費、
つまり「固定費」は、家賃、人件費、豪華な厨房設備や内装、
カトラリーや皿、グラスなど什器備品の減価償却代、水道光熱費、
そして、金利なども含まれます。
おおがかりな店の回転資金(テナントの保証金も含む)を
小さな店が10年も満たない営業だけで蓄えて、
すべてキャッシュで用意できたとは誰も考えないからです。
そして、「変動費」。
売り上げ如何で変わるものですが、
いわゆる売値の3割と言われている食材費が当たります。
厳密には調理する時のみ使用する水道光熱費は
「変動費」に入るかもしれません。
この「固定費」と「変動費」。
料理店に限らず品質を保つ為には、
「変動費」の切り詰めには限界があります。
利益を改善するには、品質などに影響を与えない範囲で
「固定費」を削っていかなければなりません。
競争力をつけるため(価格を抑える、品質を上げる)ためには、
「固定費」と「変動費」のバランスをとりながら
「商品開発」などにも取り組んでいかなければなりません。
料理店でいいますと、CPの良い店を目指す場合
(つまり価格と食後の満足感のバランス)も同じです。
滅多やたらと「固定費」をかけることは、
そのつけを売価に転嫁することになります。
しかし料理店業界はブランドバッグのように
原価の何十倍でも値付けられる分野ではありません。
一般のバッグが数万円なのに、
デザインとマーク以外たいして変わらないのに
10倍の50万円前後が売り切れるといった現象はよく聞きますが、
料理店では、高級料亭やグランメゾンでも
(レアな高額ワインを飲まなければ)
普通の店のせいぜい数倍でしか請求できません。
売価に対する「固定費」や「変動費」の割合が
非常に重要になってくるのです。
明日は具体的に数字を挙げて考えてみたいと思います。
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