第257回
ワインの諸々 その15
最近のワインにテロワールの違いがあるか
先日たまたまご一緒したフランスの有名レストランの関係者と、
ワイン会で話題になった事があります。
ちょっと専門的になりますが、
ここ10年くらいでニューウェーヴというか、
新しいスタードメーヌ(ワインの造り手)がかなり出てきました。
特にブルゴーニュでは、
カリスマ的になってしまって、リリース価格からして高額である
DRCやルロワのワインと
同じような高値で売り出されるものがでてきました。
しかも、売り出し後すぐ完売する傾向がみられます。
例えば、クロード・デュガ。
第3次ワインブームまえの1995年以前は
簡単に安く手に入ったはずですが、
今は熱心なファンが多いからか、
最高峰の特級畑、グリオット・シャンベルタンは巷に流通せず、
村名ワインですら
1万円以上の値がついて取引されている場合もあります。
ドミニック・ローランという造り手も、
私は過大評価のドメーヌだと思いますが、
うまく宣伝に乗ったのか高価格で取引されています。
その他も1990年代になって、
新星とか天才とか言われる造り手が世にでてきたのですが、
私に言わせると彼らのワインには一つの大きな特徴があります。
ワインは地域、いや道一つ隔てた畑でも、
その味わいが異なると伝説的に言われています。
日当たりなど土地の傾斜による日照条件、水はけ、地質など
様々な要素で個性がでるということを
「テロワール」の違いと言っているのですが、
この新星ドメーヌのワインは、
アメリカ人好みというか早飲みタイプというか、
どれも色濃く濃厚で、
その肝心な「テロワール」の違いを見出すのが困難なのです。
極端にいいますと、
一番レベルの低い地方ワイン(ブルゴーニュという原産地呼称)や
村名ワインから、1級畑、特級畑にいたるまで
きっちり濃く樽を利かせて造っているので
違いが見出しにくいのです。
よく言えばどれも味が濃くて安定している、
でもはっきり言うと、全部が厚化粧、大味で
高級も廉価も違いがわからないものなのです。
高級松坂牛といえども、
ニンニクやソース、ケチャップをバンバン振りかけて食べて
肉本来の味わいを感じ取れなくなっているものと同じと
考えてください。
最近の世界的な傾向、好みの変化だといわれるとそれまでですが、
これらのワインはまだ10年そこらしか経っておらず、
古酒というものが存在しません。
私は長熟なワインではなく、
早く飲みきるべきワインと考えますが、
古酒の深い味わいにふれるたびに
何か複雑な気持ちになるこのごろです。
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