第146回
シェフが浮いている、ル ジャルダン デ サヴール
昨年、南青山から銀座のはずれに移転してきました、
中澤敬一氏一人で調理するカウンターフレンチです。
昭和通りの外側で、ちょっと入ったわかりにくい立地。
ワインバーのような外観で、ドアをあけると
1階は本当にウェーティングを兼ねたバーカウンターだけです。
ワインバーとして個別の客にも対応しているようですが、
この流行っているとは思えないカウンター内に
スタッフが1人張り付いています。
そして、急な階段を降りた地下には、
シェフ1人には贅沢すぎるスペースの厨房と、
8名掛けのカウンター席。
客側のスペースより厨房の方が大きいかもしれません。
本末転倒な気もしましたが、
もう一人、ワインやオーダーを担当するスタッフがいました。
8名だけのカウンターにしては
無駄なスペース(1階部分)とスタッフ、
当然その影響は客の財布を直撃することが予想されます。
料理はコースのみ。
アミューズ、冷・温の前菜、魚、肉の皿に
デセールとテがつきます。
定番のほほ肉煮込みの場合は1万2千円、
今回は鴨でしたが
他の食材だと1万4千円と
肉は選択制ですがかなり高い値付け。
鮎とフォアグラのパテ、蕎麦の実と鮑のリゾット、
真鯛のアニスソース、と
個性溢れる料理が続いたのですが、肝心な肉料理で失速。
ほほ肉の煮込みは凡庸、
鴨もシャラン産とはいえ薄い切り身にソースが多く
べちゃべちゃでイマイチ。
素材も含めて、同じカウンターフレンチ
「トゥ ソル」の鴨の方がはるかに上と感じます。
ジビエ料理が得意なシェフとの触れ込みですが、
本当に期待して良いのか。
ワインはシャンパーニュのノンヴィンが8500円と
私の基準からは高めの設定ながら、
スティルワインは小売の1.5倍強とまずまずの価格でした。
レアなブルゴーニュもリストアップしてあり、
ブルゴーニュよりボルドーに割安感がでていました。
白はマイナーな村名ですが、
5千円以下でCPの良いものを揃えているのも有難い。
シェフは、食材や調理について話し出したら止まらないタイプ。
客よりゆったりしたスペースで、
思う存分しゃべりまくる姿をみると、どちらがメインなのか。
カウンターなのにサービス料を10%請求され、
一人当たり2万5千円は覚悟しなければならないでしょう。
料理は個性あるおいしいものもあるのですが、
CPの良さをあまり感じず、
シェフ一人が浮き上がる可能性のあるカウンターフレンチ。
通いつめても違和感をもたない常連にしか向いていないでしょう。
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