自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第119回
ワインの諸々 その4
和食店、鮨屋でワインは必要か

値付けはかなり高いですが、最近はほとんどの和食店や鮨屋で
ワインを扱うようになってきました。
それだけ、ワインを要求する客が多いということなのでしょうが、
料理に必要なのでしょうか、合うのでしょうか。

工夫を凝らして、なんとかワインに合うような料理を
創作している和食店もあります。
このような店は、客単価も高く、高級食材を扱い、手間隙かけ、
バルサミコやポルト酒といったものを使って調理するので
違和感を持たせないようにしています。
最近のダイニング系の店のように、
普通の食材にただバルサミコやポルトを使っただけでは、
ワインには合うかもしれませんが、料理自体がおいしく感じない、
といった本末転倒なことになってしまいます。

また、ワインを推奨する有名鮨屋もあります。
煮きりにバルサミコやポルトを使用しているならば
ワインに合うかもしれませんが、
それでは江戸前ではなくなってしまいます。
状態の悪いワインの一つに、
醤油の溜まりのような匂いのものがあります。
沢庵のような香りのものもあります。
ワインが酸化していくと酢(ビネガー)っぽくなります。
鮨の味わいの重要要素は、
いずれもワインのネガティヴな状態を連想させてしまうのです。
つまり、はっきり言って鮨にはワインは合わないと考えます。

ワインは気候、地質、風土といった
その生産地の特徴を持っているといわれます。
テロワールと称するのですが、
一番合う料理は
やはりその地の食材を使用した郷土料理というのが模範解答です。
日本の鮨はフランスやイタリア、カリフォルニアで取れた
魚や米は使っていないはずです。
ですから、私は無理してワインを飲まなくとも、
日本には日本酒や焼酎で充分と考える次第です。
何から何までワインを合わせていたら、
毎日違った料理を食べていても、
お酒はワインばっかりを飲むことになってしまいます。
お酒はどれが一番というものはありません。
ワインも日本酒も焼酎もみなおそれぞれ持ち味があるのです。

自国の代表料理に他国の酒類を無理して合わせようとしているのは
日本人くらいではないでしょうか。
日本人は「和食」や「鮨」にワインを合わせようとしていますが、
フレンチに日本酒を合わせようとしている
フランス人は聞いたことがありません。
世界的な知名度の違いはありますが、
フランスで、日本酒に合うよう努力しているシェフや、
店に日本酒を置こうと考えている経営者は
あまりいないのではと考えます。

では、なぜ日本では鮨屋などでワインを扱うのか。
それは、一発売れれば大きな利益をもたらしてくれる、という
理由が一番と私は考えます。
世界的な傾向ですが、ワイン好き、
特に高級ワインを好む職種は弁護士や医者といった
3大自由業といわれる方々が多いようです。
彼らはどちらかというと富裕層であります。
私と違って、
ちまちまワインの原価や値付けを問題にしない方も多く、
彼らにうまく高いワインを売ることが出来れば、
本業の鮨より利益を上げられる可能性があるのです。
日本酒で1本(4合瓶)に
数万円の値をつけるのは限られた物しかなく難しいですが、
ワインでは簡単に探し出すことができます。
10万円の日本酒は売れませんが、
10万円のワインは売れる可能性があります。

ワインは料理店、特に鮨屋にとって、
売り上げ、利益増のための切り札のようです。


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