| 第59回蕎麦の「手打ち」は絶対条件か
 蕎麦の「手打ち」、この拘りは、鮪は「生の近海もの」というのと同じくらい店のレベルを見る上での重要視されているようです。
 デリバリーをするような蕎麦屋は
 業務用の機械打ちの蕎麦を購入している場合が多いでしょうが、
 いまどきちょっとした値段をとる店は
 客側が勝手に「手打ち」と思い込んでいる場合もあります。
 店先にパフォーマンスとして、手打ちを実演している店。これは間違いありませんね。職人の経験や腕の問題は残りますが。
 ただ、少量な割に高額を要求する「室町 砂場」や「竹やぶ」は
 表立って打つ姿を客に見せていません。
 でも「手打ち」を疑う人はいませんよね。
 やはりパフォーマンスを必要とする店は中途半端なのでしょうか。
 反対に私が知っている中で最高額を要求する「翁」(恵比寿)は、客が冷静に考えれば「手打ち」に疑問を持つ店です。
 カウンター主体の店で、割烹料理を1人前は頼まないと
 蕎麦を出してくれません。
 よほどの常連でないと蕎麦だけの食い逃げが出来ないのです。
 でも、この店の売りの「御前蕎麦」にしても
 数ある「変わり蕎麦」にしてもコストは別にして
 香り、繊細な食感、独創性は私は気に入っています。
 でも、「機械打ち」としか考えられないのです。
 定番の「御前蕎麦」はあらかじめ用意することが出来ましょうが、
 10種はある「変わり蕎麦」はこの店のキャパでは
 造り置くことができません。
 料理人は、変わり蕎麦の注文を受けると
 おもむろにつけ場の隣の個室へ入りドアを閉めます。
 待つこと10分くらいでしょうか、
 「トマト切り」や「モロヘイヤ切り」などの
 打ち立ての蕎麦が2人前単位で登場してくるのです。
 この店の詳しい情報はいずれアップするかもしれませんが、
 お会計を知らずに食べた人が悪く言わないこの店の蕎麦が、
 10分で出来る「機械打ち」ということで、
 「手打ち」神話は崩れます。
 拘りのある料理は蕎麦以外にも鮨、鰻などあります。料理法、産地、食べ方などなど。
 でも、実のところはそんなに拘るものはないのかもしれません。
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