第35回
料理評論家、フードジャーナリストの習性 その1
おいしい料理を食べるのが第一目的
誰でもどうせお金を出して食べるなら
「おいしい料理」を食べたいもの。
なにもわざわざ
自分の口に合わない料理を食べたがる人はいません。
料理評論家、フードジャーナリストたちも
我々一般客以上に「おいしい料理」に興味があり
食べたがっているようです。
もともと、食べ歩く趣味が高じてその道に入った人たちですから。
でも、だからといって本来の職務である
厳正な店の料理の批評を二の次にして、
店の特別料理を喜んで食べてPRしているだけの実態は問題です。
どうせ食べるならおいしい料理を食べたい。
それには実名取材をあらかじめ通達しておいて、
料理人に特別料理を造る余裕を与えておく。
出てきたその店の精一杯の「特別料理」を食べて、
シェフの簡単なコメント(どこの店で修行した、
素材はどこから仕入れている、店のセールスポイントなど)を
聞き出し、料理の写真を撮ってメニューの一部を記録して、
一丁上がりなのが彼らの仕事です。
原稿には、店の住所、電話番号などの情報の他、
当たり障りのない料理に対するコメントを加えるだけです。
自分のガイドを読んだ読者が訪れた時、
同じようなレベルの料理が出ないことを承知していながら、
店と闇取引して「特別料理」を食べてしまう
評論家、フードジャーナリストたち。
自分たちと読者の食べる料理のレベル差を
まったく気にしない彼らの思考はいかがなものか。
料理評論家、ジャーナリストとして、
その道でいくらかでも収入を得ているならば、
そしてその収入の根源が出版社ではなく
読者の雑誌の購入代から来ているということが
わかっているならば、
このような一般客である読者に対する
背信取材はしないと思うのです。
「食」というのは昔から人を魅了し、
判断を鈍らせる魔物のようなものです。
評論家、フードジャーナリストは
その矜持を守るより、おいしい「特別料理」の
誘惑に負けてしまっているようです。
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