第11回
料理人の勘違いポーズ
最近料理人がやたらとマスコミで持て囃されているのを
どう感じ取られますか。
それなりに色々な経験を積んだ年取った料理人が、
あれこれ無理に難しい言い回しで
自分の料理を解説している本が結構あります。
ま、お年寄りですし、黙って聞き流すことも必要でしょうが、
気になるのはまだ30才半ばの料理人が
やはり、難しい、哲学的な言い回しで発言していること。
プロデュースというのでしょうか、
料理店の設立に携わったデザイナーたちにも
その傾向が見受けられます。
私はこの勘違いシェフたちがでてきたのは、
ポール・ボキューズのせいではないかと思っているのです。
フランス料理界の重鎮であるこの人は大柄なのでしょうか。
まず思い浮かべる姿は、ふんぞり返って両腕も組んだ写真。
彼の有名なポーズ写真ですね。見ている人に威圧感をあたえます。
確かに手を下にして気をつけ状態では威厳が出ないだろうし、
壁に手を当てていたら、
また変な格好の料理人と言われるかもしれません。
彼ほどの年齢とビッグネームなら私も我慢するのですが、
最近の若いシェフたちが雑誌などに登場する時、
必ず、このふんぞり、両腕組みのポーズで出てきています。
私にはどう見ても、知性のある、品の良い、
謙虚な人には見えません。
人間は態度をでかくとり続けていると、
かならず中身も傲慢になってくるものです。
回りのマスコミも必要以上にヨイショをしていますし、
タニマチや常連も甘やかしてしまうのでしょう。
自分が何か偉くなったように勘違いした人が
それを維持したいがために次に考えるのが、
自分の仕事の理論武装です。
つまり、なにかと自分の仕事を難しく、
理屈をつけて言い表そうとして、差別化をはかってくるのです。
経験と感どころの仕事も「秒単位」と言ってしまう人もいます。
人の中身は外観に現れてきます。
ポール・ボキューズも罪作りな事をしてくれたものです。
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