女はキツネの知恵で勝負する
亭主が自分のふところに戻ってきたことを実感するようになると、朱はお妾の宝帯をことさら可愛がるようになり、食事をしたり、酒盛りをする時も、わざわざ亭主のそばに座らせたが、洪は宝帯を見るごとに今まで気づかなかった醜さが目につき、席半ばにして、宝帯を追い立てるようになった。
ある時、朱は嫌がる夫をなだめすかせて宝帯の部屋に押し込んで扉をしめた。一晩中、洪は手を出さなかったので、妾の方はいよいよ洪を恨み、人に向かって恨みツラミを言った。洪はますます嫌がって怒鳴りつけたり手をふりあげたりしたので、宝帯はおこってとうとう身のまわりに気をつけなくなり、ボロを着て、よごれた靴をはき、頭もボサボサに乱してすっかり女らしさを失ってしまった。
「どうでしたか、私の術は?」と恆娘が朱にきいた。
「本当に効果テキメンですわ。私はおっしゃる通りにやるだけで、どうしてそういう結果になるのか見当もつきませんけれど、何故、主人の好き勝手にやらせたら、私のところへまた戻ってきてしまうのかしら?」
「それは、故(ふる)きを厭って新しいものを喜ぶのが人情の常だからですよ。また人間は難しいと思うと挑戦する気になるけれど、いつでも手に入るものだとバカにする癖があるからですよ。男の人がお妾さんにいれあげるのは、必ずしも美人だからじゃなくて、新しく手に入ったものが甘美に思えて、いろいろと困難を乗りこえて行くことにスリルを感ずるからです。だから好き勝手に行かせて、飽くほどたんのうさせたら、どんなご馳走だってもうたくさんだという気持ちになるでしょう?」
←前ページへ 次ページへ→

目次へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ