では中国人の社会では、何故に女性が男に対して優位を保つことができるのであろうか。私は、それは女が社会的には男と同等に扱われていなくとも、自分の夫となる男を操縦する術にたけているからではないか、と思う。『聊斎志異』という珍しい話ばかり集めた本の中に「恆娘」という話が出てくる。
洪大業は都の人である。妻の朱氏は容姿のよい美人で仲よく暮らしていたが、のちになって亭主が女中の宝帯を妾にした。宝帯は自分に比べて容貌もずっと劣っているのに、夫が妾ばかりかわいがるのを見て、朱は不平に思い、夫と睨み合うようになった。洪は妾のところに公然と泊まりこそしなかったが、ますます、宝帯をかわいがり、妻をうとんじるようになった。
のちに洪は引っ越しをして、呉服屋の狄という人と隣同士になった。狄の妻の恆娘というのが先に挨拶にきたが、見ると器量は十人並みで、年の頃も三十歳あまり、気さくな感じなので、次の日に、朱の方が答礼の挨拶に行くと、家の中にお妾さんが同居していて、年も二十歳くらいで、ずっと若く大そうな美人であった。
ところが、それから半年近くもお隣に住んでいたが、喧嘩をしている声をきいたことがなく、狄は恆娘ひとりだけを愛して、お妾の方はお飾りみたいなものにすぎないことがわかった。
ある日、朱は恆娘をたずねて、
「あたしは前に、夫が妾を愛するのは、それが妾だからだと長いこと思っておりましたわ。だから、妻という名を妾にかえたら、どうかしら、と真剣に考えたこともございますのよ。でも、おたくを見ているうちに、それがそうではないことがわかりました。ひとつ、私を弟子にして、秘訣を教えていただけませんか?」
「あら、それはあなたが自分を見捨てて、男の人ばかり咎め立てているからですわ。草むらの中で雀を追うようなもので、追えば追うほどだんだん遠く逃げて行くものなんですよ」と恆娘は男を操縦するコツをこっそり耳打ちした。
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