お金と時間の管理学
「お金」だけではもう心に響かない
私ももうかれこれ二十年間、利殖についての話を書いている。書きながら、時々矛盾を感じることがある。というのは、私の話に耳を傾けてくれるのは、お金儲けの上手な人ばかりで、いってみれば、そういう人たちがもっとお金持ちになるのをお手伝いしているようなものである。つまり私の話などきく必要のない人が私の話をきき、私の話をきく必要のある人はあまり私の話に耳を傾けてくれないのである。
それでも本が売れて、講演のスケジュールは年中ギッシリ詰まっており、収入もそうバカにしたものではないから、頭を抱え込むほどのことではない。結局、世の中には、「お金に縁のある人」とそうでない人がいて、「お金に縁のない人」でも、ちゃんと飯を食べていけるだけの豊かな世の中になったのだから、それはそれでいいじゃないかということになる。
しかし、世の中は刻々と変わって行くから、お金儲けの情報も昔と同じであってよいわけがない。お金儲けをしようとする人の心理もまた以前とは違っている。「こういう具合にやれば、儲かりますよ」という情報をズラリと並べて、よりどり見どりでやるようなやり方は、もともと私の性に合わないのである。
かといって経済に対する私の見方は、経済学者と呼ばれている一群の人たちとも違う。彼らは経済現象を総花的にとらえ、それを数値で表現しようとする。割り切れない部分が出てくるとそれを無視して、数字だけでころがしていくから、しまいに実社会と全く関係のない高等数学の遊びに堕してしまう。 |