二十七歳から「遊び」と「仕事」の比重がかわる
問題は、趣味を趣味として割り切っている人たちにとって、どうやれば「寝食を忘れる」ような、本職を見つけることができるか、であろう。
「仕事」と「遊び」と二つ並べると、年の若いうちは、ほとんど躊躇なく「遊び」のほうを先に選ぶ気になる。とくに学生時代は「遊びたい盛り」で、遊びが生活の中心になり、「勉強」とか、「試験」とかは、「必要悪」か、「遊び人間に課せられた罰」みたいなものである。就職をしたあとも「勉強」が「仕事」に代わっただけで、基本的な変化はなく、仕事が試験に代わって「必要悪」になる。仕事をするのは、生活の糧を得るためであり、生きる楽しみは別のところにあるのだから、仕事にかける時間はなるべく短縮して、効率化し、残った時間を遊びといわないまでも自分の好きなことに使いたいと考える。
そういう立場にいる人から見ると、朝から晩まで寸暇なく働いている人間は、目的と手段をはき違えた「愚かな人間」に見えてしまう。現に、私自身も、自分の子供くらい若い連中から、「バカの標本」みたいにいわれたことがあった。
しかし、学校を出て四、五年たち、三十歳の坂がほの見えてくる年齢になると、結婚したり、家庭を持ったり、社会人としての将来をどうするかという問題といやでも直面するようになるので、「仕事」と「遊び」の比重が逆転して、「仕事」に次第にウェイトがかかってくる。 |