「寝食を忘れさせる」ほどの仕事を探せ 時間の有効な使い分けができるか
夢中にならないと成功できない
時間をできるだけ有効に使おうと思えば、日常生活の中で毎日きまって使われている時間を短縮するよりほかない。通勤時間などはさしあたり槍玉にあがる対象で、私の通勤時間もせいぜい十分間くらいに切り詰めている。その十分間も、朝なら新聞を読んでいるし、夕方なら本を読んでいるか、仕事の整理をしているか、人と話をしている。
これを見てもわかるように、無駄な時間を節約するのは決心ひとつで、そんなに難しくはないが、節約して残した時間をどういう具合に配分するかが案外、難しい。それというのも、何が重要なことであるかという判断は人によってそれぞれ違うからである。お金儲けが最重要と考える人もあれば、立身出世が大切と思う人もある。また遊ぶために働くのだから、遊びの時間を短縮するわけにはいかないと考える人もあれば、食うために生きているのだから、食事の時間を節約するわけにはいかないと考える人もある。
さらにはまた学問的な業績をあげることにだけ生きがいを感じている人もあれば、ボランタリー活動に全精力を注ぎ込んでいる人もある。つきつめていけば、それはその人の人生観とか、哲学の問題であるから、どの考え方が正しくて、どの考え方は間違っていると断言することはできないのである。
しかし、何か自分のやりとげたい仕事があって、その目的のために犠牲を惜しまない人は、俗にいうように「寝食を忘れる」くらいでなければ、とても成功はおぼつかないであろう。たとえば、本田宗一郎さんが新型エンジンの開発に熱中していた時分はよく四十八時間も飲まず食わずで働くことが多かった。本田さんはそれでもよかったかもしれないが、つきあわされた若い部下たちはたまったものではない。
「本当は僕たち、かくれて食べていたんですよ。でもそれをいうと、張り倒されるかもしれなかったので、こっそり食べていたんです。いまだからいえることですけれど……」
と、あと社長を引き継いだ河島喜好さんがいっていたのをきいたことがある。 |