転勤の時、家はどうする
ところが、そういう人でも、「転勤」が発令されると、否応なしにみこしをあげる。東京勤務が札幌へ変わったり、大阪在住が東京へ変わったりすると、せっかく建てた家をおいていかなければならなくなる。家だけおいていくのではもったいないといって、家族までおいて単身赴任する人もある。そこからまた新しい風俗史の一頁がひらかれることになるが、むろん、大半の人たちは、せっかく建てた家と「しばしの別れ」をしなければならなくなる、この際、今まで住んでいた家をどうするかについては人によって対処の仕方が違う。

(1)また本社へ戻ってくることもあるだろうから、家はそのまま残しておこう。しかし、この場合でも、人に貸すか、留守番をおいておく必要が起こる。たいていの住宅ローンに追われているサラリーマンは、多少なりと家賃をもらってローンの返済にあてようと考える。すると、家賃をもらう大家の体験をさせられることになる。
(2)転勤した先で、また家を買う必要があるから、この際家を処分してしまおうと決心する。仮に、また東京へ戻ってきたとしても、通勤に三、四時間もかかるのはもうコリゴリだから、どちらにしても家は売ってしまったほうがよい。なぜならば、他人が住めば、家は荒れるし、家賃を払ってくれないかもしれないし、きちんと払ってくれたとしても銀行金利にもまわらない。その上、いざ返してほしいといっても、そのまま居座られる心配もあるからである。
(3)こんな思いをするくらいならば、転勤先でまた家を買うよりは、いっそ借家住まいでとおしたほうがよいのではあるまいか。借家と持ち家では、むろん勝手が違うし、心理的な安心感の違いもある。しかし、どうせあと三年たって、また転勤ならば、多少、不便でも借家でとおし、老後に落ち着くところの心配だけすればいいのではないか。

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