「ここにお金があるじゃないか」と指摘すると、
「社長、このお金は借り入れをする時に、銀行に預金すると約束したものですから、使うことができません」
「こんなにたくさんのお金があって、使えないんじゃ、こりゃ不良資産じゃないか」
「ハイ、ですから借り入れている金額のほうを減らせば、不良資産が不良資産でなくなって使えるようになるのです」。
経理担当重役の説明を受けて、貸借対照表とにらめっこをしていると、半製品、仕掛り品に販売高の四カ月分に相当する金額がねていることがいやでも目につく。これを減らそうと思えば、工作機械の一つ一つの効率をあげるだけでは間に合わず、入荷したところから完成品として出ていくまでの「時間の短縮」を全体として計画するよりほかないことにはじめて気がついた。そこで、思い切って無人工場の建設に踏み切ったが、この結果、四カ月分の仕掛り品が一カ月に減少してしまった。山崎鉄工のような年間売上六百億円の会社でいえば、二百億円の仕掛り品がわずか五十億円に激減してしまうのだから、百五十億円の資金節約をしたことになる。事実、山崎鉄工はこの改善だけで無借金経営に一変してしまったが、このことはそのままほかの企業にも充分あてはまることであろう。 |