出世するならまず三分間スピーチだ!
たとえば、三分間スピーチの練習である。
大きな会社で、各支店や営業所の店長・所長が集まって会議をひらくことがある。社長のスピーチが長いのはやむを得ないとしても、そのスピーチの下手なのに驚くことがある。
結婚式のスピーチをしているのをきくと、ふだん、どんな話の仕方をしているか、おおよその見当がつくから、あんな社長では、会社の会議の時に、社員たちがさぞや閉口していることだろうと同情心が湧いてくる。社長は上役だし、生殺与奪の権を握っているから、社員はおとなしくきいているが、社員がモタモタした話をすると、同僚も上役もだまってはいない。
私の知っている台湾のあるお役人さんは、夜は大学で講師もつとめているというのに、報告の要領が悪くて、中央銀行の総裁の前で報告をする時に、いつも二十分も三十分もかかってしまう。まわりはいずれも分きざみのスケジュールの人たちだから、ある時など、総裁がイライラして、皆の前で、「もっと手短にできんかね?」と感情もあらわな文句をつけた。本人はますますあわてて、ますます核心から遠い受け答えをしたから、とうとう暫くたって馘になってしまった。
話の上手下手だけで出世の道まで塞がれてしまうのは気の毒だが、そういう要領を得ない人の講義を今でも受けている学生のほうはもっと気の毒な気もする。もっとも学生のほうは講義をサボタージュする自由を持っているから、迷惑がるのはやはり中央銀行の総裁のほうかもしれない。会社の会議の席上での報告でも、冠婚葬祭の席上でのスピーチでもそうだが、スピーチというものは「短く、要領よく」が身上なのである。自分がいわんとすることを、短く、かつ要領よく喋ることのできる人は、時間の使い方を知った人だから、他のすべてのことについても大体スマートにやっていけるコツを心得た人といってよいだろう。
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