第182回
損する骨董―200万円の危ない落とし穴
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下手な鈞窯馬上盃の偽物
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数年前、友人から
「知人の骨董品を見てやって欲しい」
と電話が入った。
中国旅行に行った知人が、○○省博物館の収蔵品を買った。
が、奥さんが偽物かもしれないと心配しているので、
鑑定して欲しいということだった。
品物は大手旅行会社が、日本まで運送を引き受け、
決済も日本でよいとのことだった。
一緒に旅行に行った奥さんが、
専門家に見てもらってから支払いをするべきだ
と強硬に言ったらしい。
こんな鑑定の依頼はたびたびあって、
引き受けていたら大変なので通常はやっていない。
友人の依頼でもあり、この時は引き受けた。
2、3日してそのご主人と奥さんが僕の店にやってきた。
大きな御菓子箱をおそるおそる出しながら
「これつまらないものですが・・・」
といって机の上に置いた。
続けて
「まだ、作品は港にあるのですが、
これがその美術館の保証書です。」
と、金押しの仰々しい文字が書かれたホルダーを渡された。
中にごそっと保証書が挟まっていた。
ホルダーの表紙下段には誰でも知っている
中国南部の○○省博物館の名前が打ち込まれていた。
日本で言えばさしずめ、
京都国立博物館が発行したような装丁になっている。
ホルダーをあけてみると
10枚の金縁の台紙に写真を貼った保証書が入っていた。
その写真には5、60年位前の安物の陶磁器や
数年前に作られた軟玉の香炉等、
その辺に転がっていそうな作品が写っていた。
保証書を見ると下隅に小さく
○○省博物館文物商店蔵と記されてある。
いかにも人の良さそうなご主人は
あるアパレル会社を経営しているとのことだった。
仕事の関係でたびたび中国へ行く機会があったが
このたびは数人で語らい
奥さん連れで大手旅行のツアーに参加したという。
ビジネスではないのでつい財布の紐が緩み、
200万でこの保証書に載った作品を買うと言ったらしい。
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