| 第169回儲かる骨董−実行編
 2、骨董もブランド志向
 
           
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            | 古伊万里吹墨の兎(イメージ) |  骨董に流行り廃りがあるといえば、
 知らない人は「へぇ〜!」とびっくりする。
 骨董と言うからには
 最低でも150〜200年くらい経っていなければならない。
 僕らが取り扱う品は、1000年や2000年経っているのはザラ。
 だからそんな古いものに流行があることは、
 あまり知られていない。
 しかしきっちりあるのだから用心しなければならない。
 価格が大幅に動くのだ。
 僕の骨董経験はせいぜい30数年のこと。
 この道50、60年も経験した人なら
 流行り廃りの大きな波を5、6度はくぐっているはずだ。
 それでは僕なりの経験を書いてみよう。
 30年ほど前、Y先生という古伊万里の研究家がいた。本業はお医者さん、風貌は経済評論家の内橋克人先生に似ている。
 その先生が古九谷、有田説を発表された。
 業界は、このことでかなりにぎわった。
 さらにY先生は古伊万里の本をどんどん出版され、
 次々と新しい切り口を展開していった。
 事実を検証し、それまで古伊万里という
 大雑把なくくりであったものを、
 初期伊万里・盛期伊万里などと時代も分類し、
 魅力的な伊万里の世界を世に問われた。
 すると初期伊万里など、それまであまり注目されなかった作品が大きく値を上げだした。
 初期伊万里(161年頃〜1670年頃)の吹墨の兎の図などは、
 直径21cmくらいのもので
 焼き上がりが良いと300〜350万円位するようになった。
 こうなると火がついたように
 皆初期伊万里の作品を求めるようになった。
 「先生、初期の良い皿ありませんか?」と尋ねたところ、「沢山持っていたが、もう一枚もないよ。
 次は中期だな!僕は今『盛期の伊万里』という本を書いている。
 絵付の良いのを買っておきなさい。」と手の内を見せてくれた。
 「それ2、3点譲ってください。本に収録されるのを」と言うと、
 「自分で集めなさい」とびしっと決められた。
 そのブームに乗って、多くのコレクターが盛期伊万里を買った。
 その兎の皿は今せいぜい120〜150万くらいだろうか?
 骨董のマーケットなんて狭く、浅いものだ。
 誰が何をやっているか注意しているとよく見える。
 株や土地、金なんかよりよほど分かりやすい。
 マーケットが巨大だとどうしても色々な要素が絡んでくる。
 骨董は値下がりのカーブもまたゆっくりとしている。敏感なコレクターが売りに回っているときでも、
 他のコレクターはまだせっせと買っているという調子だ。
 美術館の展示や出版物、雑誌の特集などに目を配り、
 熱が上がる前によい物を選び、そしてピークを逃さず売る。
 こんな目配りをしながら骨董を楽しもう。
 ブランドはこうして作られる。
 魯山人、九谷、ガレーやドームなどのアールヌーボ、この20年ほどの間に色々なブームが何度か生まれ消えている。
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