「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第148回
<とぴっく10>
アジアのリッチマン ミャンマー編
ハイパーインフレを乗り切ったアイテム


ウインさんの言うところによると
「この国はある日突然と新しい紙幣が出て来るんだ。
 それも100とか50とかじゃない。」
「ヘ〜、計算が大変だね」
「15,35,45,90チャットというような
 むちゃくちゃな単位のものが出てくるので
 信用も何もあったものじゃない。
 この金を持って海外に行っても、紙くずみたいなもんだ」
ウインさんは始めのうち、
新しい紙幣が出るたびに努力して新札と取り替えていたが、
まとまった金を銀行で交換すると財産を全部把握され、
法外な税金を要求されたらしい。
特に印僑、華僑が狙い撃ちされた。

ネ・ウイン将軍が占い師に聞き、
ハンパな単位の紙幣を発行したという話は、
彼によるととんでもないと言う。
将軍はとても賢いやり方をやったらしい。
なんでもありというやり方で
印僑、華僑の資産と言う資産はすべて吐き出させたらしい。
こんな国だから土地を持っていても全く価値がない。
それに銀行預金や現金を持っていても
インフレで手の打ちようがない。
ドルを買おうとしても
公定レートと闇レートに百数十倍のギャップがある。

そんなわけで印僑や華僑の商人は
殆ど国外へ脱出してしまったそうだ。
その結果、ビルマは将軍のファミリー以外は
みな貧乏になってしまった。
金持ちのいない国は絶対に発展しない。
それがビルマの実情だとウインさんはこぼした。

「あなたは大金持ちだと吉田さんから聞いたが
 資産はどうゆう形で持っているのですか?」
「私は翡翠やルビー、金製品の
 飛び切りいいものにシフトしている。
 ま、今ではそこそこやれている」
と言って、メイドが持ってきた錠前付の小箱を開けた。
中に親指の爪くらい透き通った濃いみどりの翡翠があった。
ウインさんは新券が出る前に新作、骨董を問わず、
良い翡翠やルビーを国中探し回って言い値で買ったそうだ。

「これ幾らですか?」
「バンコックのディーラーが30万ドルと言っていますよ」
と、何気ない風に言った。
持ち運びが簡単で、
誰もが欲しがる国際的な価値を持ったものへ投資した。
それがこの国のリッチマンの姿のようだ。
それにしてもインフレを凌ぐ商品は何かよ〜く考えておこう。
それが最大の儲け口かもしれない。


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