| 第147回<とぴっく10>
 アジアのリッチマン ミャンマー編
 インフレ、デノミ迫害に耐えた男
 
           
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            | ビルマ翡翠 |  ビルマで吉田さんという日本人と知り合った。
 元軍人で戦後もビルマに残り、国軍の指導をした人だ。
 ビルマ独立後は軍の高官になり、
 リタイア後は日本企業のアドバイザーをやっていたそうだ。
 僕は当時骨董を探しに、アジアのいろいろな国を回っていたが、
 ビルマも僕のフィールドの中に入っていた。
 吉田さんが「骨董をたくさん持っている人がいるから訪ねてみよう」
 と言った。
 彼が案内してくれたところは
 ボージョー・アウンサン・マーケットだった。
 中には小さな店が薄暗い屋根の下にびっしりと入っていた。
 入口から30メートルくらいのところに
 比較的大きな宝石と金を取り扱う店があった。
 吉田さんは馴染みのようで
 「やあー!」と手を上げて入って行った。
 奥に60歳位のインド系と思われる浅黒い小太りの人がいた。「島津さん、この人が大金持ちウインさんです」
 と、吉田さんが紹介してくれた。
 それまで僕が会ったアジアの大金持ちは
 どっしりして威圧的でさえあったが、
 この人は渋ちん臭い感じのぱっとしない男だった。
 不安そうな僕の顔を見て
 「そのうちわかりますよ」
 と吉田さんがそういうのだから大金持ちなのだろう。
 僕たちは彼の家に行くことにした。
 そこはヤンゴン市内中心部の古い住宅街だった。戦前はイギリス人が住んでいたそうだ。
 ウインさんの家は敷地が300坪くらいだが、
 建物はそんなに大きくなかった。
 僕たちは応接間に通され、しばらく待たされた。
 ロンジー(ビルマ巻きスカート)を直しながら
 ウインさんが入ってきて、
 「あなたはどんなものが見たいのですか?」といった。
 「古い陶磁器や、ブロンズのよいものはないですか?」と尋ねた。
 彼の答えは意外なものだった。
 「今ここではそんな重たいものはまったく価値がないんですよ。
 私の持っているものは翡翠やルビー、それに金製品です」
 といって奥からメイドに小箱を持ってこさせた。
 
 (続く・・・・・・)
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