「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第144回
<とぴっく10>
アジアのリッチマン インドネシア編
建築廃材は宝の山

古伊万里染付皿

その後10年位してから
骨董好きのラルウさんと
ちょくちょくウジュン・パンダンで会った。
近くの海に沈没船でも沈んでいるので、
引き上げているのかなと思っていた。
ウジュン・パンダンには2、30軒の仕入先がある。
ある時鉄製の鍵やドアノッカー、風見鶏、デルフトのタイルなど、
味のよい時代物の建築部品が大量に出回りだした。
この方面は特に専門でもないので幾つか買っただけだった。
建物にでも取り付ければムードがあるものだ。

ある仲買人に「なぜこんなに沢山あるの?」と訪ねると
「知らないの?港の倉庫を壊しているんだ」といわれた。
「あんな世界遺産見たいな建物を壊してどうするの?」
「ラルウがあの一帯を買って新しい港を作るらしい」というのだ。
彼が再々ウジュン・パンダンに来ているわけがわかった。
そのうちたくさんあったノッカーや風見鶏などが
なくなってしまった。
おまけにみなと近くに小山のように積んであった
古煉瓦やタイル、瓦までもなくなってしまった。
聞くところによるとラルウさんが
一日150円くらいで人夫を雇って仕分け、
オランダやアメリカ、日本へ送ったという。
はじめ倉庫や家を壊したとき重機を使っていたが、
骨董好きな彼は
廃材をアンティーク好きな欧米人に売ることを思いついたそうだ。
倉庫をつぶし廃材として出た
ドアノッカーやレンガ、窓枠を売上た金で
倉庫街の買収費用の10%ほどが賄えたと人づてに聞いた。

新しい港が出来ることをいち早くキャッチし、
誰も動かないうちにだーっと買い占める。
こんなやり方でインドネシアでは一部の人が大儲けするようだ。
それにここら辺りのリッチマンはやることがとても細かい。
日本人だったら古い家を壊すとき、一度に壊してしまう。
せっかちには金なりという言葉通り行動してしまう。
しかしインドネシアでは時間と人手は幾らでもあり、
廃材でも徹底的に利用するのだ。

倉庫の煉瓦は1個50セントで売れたそうだ。
街全体の倉庫で使われた煉瓦は
100万や200万の数ではないだろう。
こんな細かいところの目のつけ方、発想を
我々も持ったらどうだろうか。


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