| 第141回<とぴっく10>
 アジアのリッチマン
 <フィリピンの新興財閥―女、邸宅、骨董、美に囲まれたバラ色の日々>
 
           
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            | 元染牡丹唐草文 |  ヤッコさんはスラムみたいなところを安く買って塀を作り、
 高級住宅街にし、レンタルし、大もうけしたのだ。
 マ、言ってみれば大統領と手を結んで地上げをやり、
 高級住宅街にして賃貸しするのだ。
 同じ例が今インドネシアのジャカルタでも進んでいる。
 噂ではその資金源の一部に
 日本人やアメリカ資本も絡んでいるようだ。
 彼の家はとてつもない大邸宅だった。玄関前にはヨーロッパ風の太い円柱が並び、
 緑の芝生の中に熱帯の赤い花も風に揺れていた。
 そこはマニラの都心なのだ。
 車を止め、アーチをくぐるヤッコさんの足取りは軽やかで
 人生を楽しんでいるようだ。
 玄関を入ると壁際に15,16世紀頃のものと思われる象牙のキリスト像があった。
 「ここんとこ、値打ち者のマリヤやキリスト像は
 全部ヤッコさんが買うからね」
 と知り合いの骨董屋ベンが言っていた。
 南宋青磁の逸品が、
 スポットを浴びて部屋中央のガラスケースの中に入っている。
 それやこれやを4,5点誉めると、彼はうれしそうに頬を緩めた。
 骨董とは実に不思議なものだ。
 普通だったら大物ヤッコさんとは
 絶対に会話するチャンスがないが、
 僕は今彼の家に招かれている。
 そこへ奥さんがトイ・プードルの先導で出てきた。
 物凄いきれいな人だった。
 彼女とはマドリッドで出会い、
 マニラに来てもらったのだとヤッコさんはのろけた。
 奥さんも家もインテリアもすべてに最高を追い求めている。
 それが彼の人生のコンセプトなのだろう。
 彼に元染の大皿と壺を見せてもらった。見込みに牡丹唐草が力強く描かれた素晴らしいものだった。
 壺の側面には魚が悠然と泳いでいる。
 クリスティーズのオークションで
 同様の壺が2億円ほどだったのを思い出した。
 
 (この項続く・・・・)
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