「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第136回
<とぴっく10>
スーパーリッチマンの定義―金、時間、喜び

12世紀クメールビシュヌ神像

このビジネスをやって本当に良かったと思うことは、
骨董を通じ素晴らしい個性を持った人達に出会えたことだ。
大金持ち、物凄く頭の良い人、マフィアの親分、
センスは良いがちょっとお金の不足気味な人など・・・・。
そんな人達の中でも、
タイのある企業グループの会長、タンさんのことが
印象深く残っている。
金持ちとはどういうものか、というタンさんの定義を紹介しよう。

彼は苦労してタイに根を下ろした中国系のタイ人だ。
自動車、セメント、旅行会社などなど、
傘下の企業は大企業と言われるものだけでも十数社あり、
今ではそれぞれの企業が世界中に進出しているほどだ。
そのタンさんと知り合ったのは
彼の娘さんとの出会いが切っ掛けだった。

僕が駆け出しだった頃、
ある企業の現地駐在員から彼女を紹介された。
当時僕はタイの古陶磁に目をつけており、
どこかに掘り出し物はないかと情報を集めていた。
彼女に話したところ、一週間もすると
チェンマイ、スコータイ、サワンカローク、
アユタヤ、バンコクの骨董店の詳しい説明と
写真まで添えられた資料が僕の手元にドサッと届けられた。
彼女のお父さんの会社はタイ全土に支店を持っており、
その伝で各支店を動員して調査してくれたのだった。

はじめ、僕が買い付ける古陶磁などに
まったく興味を示さなかった彼女だが、
あれが良いこれがよいと説明したり、
日本に送ってもらったりしているうちに
彼女も骨董に興味を持ち出し、
いつしかライバルとさえ思えるような一面もあった。

骨董店からタイの陶磁器や美術品を
どんどん買い付けていたある日、
彼女のお父さんのタンさんが一度会いたい、
と彼の秘書から連絡が入った。
デカイ家だとは想像していたが、
僕の想像を絶する物凄い大きな家だった。
門を入ってしばらく行くと、
やっと家が木の葉隠れに見えてくる。
家の前に車庫があり、
中に世界中の最高級車がずらっと並べてあった。
その車庫の前にシェパードが5,6匹いてワンワン吠え立てた。
犬たちの家が当時の僕の家より遥かに大きく
がっくりきたのを覚えている。
応接間に通されてしばらくすると
小柄で、痩身白髪の紳士が入ってきた。それがタンさんだった。

15,16世紀ラオス座仏

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