「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第127回
<とぴっく10>
世界一巨大観音像のオーナー

明染付水禽文鉢

ずいぶん前、大阪のHデパートで古陶磁の展示即売会をやった。
初日の夕方、小柄でエネルギッシュな
60歳くらいの男性が現れた。

「これやっているのは君か?」
と凄みのある顔を突き出して言った。
ちょび髭、小太り、金ぴかの服、
怖い人かなと思ったが、どこか人のよさそうな面もあった。
「社長これいかがですか?」
と青磁の大鉢を薦めた。
ちらりと横目で見て「フン!小さいな」と一言。
「社長、この時代のものでしたら、
 かなり大きい方で上手の物ですよ」
と、もう一歩踏み込んだ。
「ゴジャゴジャ説明せんでええ」
と鋭い目でにらまれた。
良く見ると顔の右側に刀傷もある。
やっぱり怖い人かもと思った。

「社長、お気に入った物があればおっしゃってください」
と、一歩下がって言った。
すると作品の壺や鉢を手に取るでもなく後ろを向いたまま、
「これ何ぼや?」
と聞き取れないような小声でボソッと言った。
「どれですか?」
と彼の背中に声をかけた。
「全部や」
「全部って展示しているの全部ですか?」
時々こんな冷やかしの客もいる。
しかしこの人は傍若無人と言うのか人を食っていた。

どうせ買わないと思ったが一応出展品の合計金額を言った。
「○○○万円です」すると男性客はやっと振り向いた。
「あんた、寝とんの?」と挑発するように言う。
デパートの催事場で怒る訳にもいかず、
この客には少々てこずった。
僕が任されている値引率15%でもう一度数字を出してみた。
「これくらいにさせてもらいますが・・・」
と言って値引きした数字を電卓で見せた。

・・・次回に続く

高麗青磁線刻鳳凰文鉢

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