第110回
商品学(パキスタン編)
戦争もビジネスにする村のボス
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2,3世紀ガンダーラ菩薩頭部
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始めのうちは友好的だった場が
僕の値切りがきついので、だんだん険悪になってきた。
「イランから買い付けすぎた。それに給料日も近い。
金がいるからこんなに安く
あんたに売る羽目になってしまったんだ」
「それはそっちの都合。別に売ってもらわなくてもいいよ」
と言って席を立とうとしたら、
腕が伸びてきて椅子に引きずり戻された。
「あんたも社長。私も社長。
会社を経営していくのに資金繰りで大変なことがあるでしょう。
話していると損ばっかりする。助けてくれ!」
と、折れてきたので話をまとめる気持ちになった。
「わかった」と言って、
品定めした絨毯を10本買い付けてやった。
すると急にしおらしくなった。
ぎりぎりの取引をすると、お互い結構疲れるが
後は気持ちよく収めることができる。
そして2割ほど支払い、
後は税関をクリアーするときに渡すことにした。
お互いに相手のしたたかさを称え合った。
値切り倒しても、この称えあうというポーズが大切なのだ。
それに結構このあたりの人は
あつかましいだけでなく男気も持っている。
「骨董品の仕入に来たんだが、良いルートはないかね?」
と尋ねた。
絨毯屋家業は結構、
あちこちから危ない橋を渡って物を運び込んでいるので
良い情報を持っており、
始めに書いたペシャワール近くの村のボスを紹介してくれた。
僕が会った村のボスは
その一帯でいろいろなものを集める
本締めみたいなことをやっていた。
ちょうどそのころはソビエトがアフガニスタンに侵攻し、
ソビエト軍が若干押され気味の時だった。
アフガンの農民が拾ってくる
小銃やバズーガなどもかき集めて、
どこかに流す仕事もやっていたようだ。
その彼がガンダーラの石像や銅剣、舎利容器、
金貨、ガラスなども発掘していた。
彼の倉庫は本当に素晴らしい宝の山だった。
もしこの絨毯屋の情報と紹介がなかったら、
僕はパキスタンでは殆どビジネスが出来なかったと思う。
どんな世界に入っても、
このあたりではまず最初にコネを造ることを考えて、
そこからずるずると入っていくのが良い。
ああ、最後にスワトーの石像とストッコについてほんの少し。
ガンダーラの美術品の中では
このあたりはやや後期に属するので、
時代的には3,4世紀頃のものが多い。
石はグレイから緑の色合いだ。
それに漆喰製の様々の神像がある。
このあたりはとても危ないところだから、
今しばらくほとぼりが冷めるまで
行かないほうがよいと思います。
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