第88回
商品学(ミャンマー編)
不思議な緑絵の皿−今では鳥文緑絵皿は300万!
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15世紀 緑絵鳥文大皿
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アジアの焼き物で、緑絵具が使われているのは
唐時代の長沙窯作品くらいのものだ。
他に全く例が無い。
長沙窯のものなど筆使いは稚拙なものだ。
ここで見つけた絵付けはかなり高度な技術を用いている。
僕はその時ペルシャ陶磁との関連性を考えたほどだ。
少し例が違うが、地球上には数限りない動植物が生存している。
そんな数の中からでも、
新種を発見すると新聞等は大々的に取り扱う。
人間が作った陶器の新しい種類など高が知れている。
その新種にめぐり会ったのだ。
こんなことは一生のうちでも
恐らくよほどの幸運に恵まれないと無いだろう。
幻の作品を見つけたので僕は本当に興奮した。
チャロンさんに薦められた緑絵皿を日本に持ち帰った。
結構高価だったが、飛び切り良い品で
ハムザ(神鳥)を描いた美しい文様や
アラベスク文(アラビヤの幾何学文様)、魚文などだった。
後日これらの作品がタイで出版された本や様々な書籍に載った。
タイ人からものすごい高値で買うから持ってきてくれ、
と幾度も言われた。
大皿は僕の手を離れ、
それぞれコレクターが今も大切にしている。
発見してすぐ、東京国立博物館のH先生や
2,3の美術館に紹介したが
緑絵の皿にはあまり関心を持ってくれなかった。
その緑絵皿が発掘された近辺から
膨大な量の中国、タイ、
ミャンマー、ベトナムの陶磁器が発見され、
世界的なニュースになった。
一説によると7万点くらいの出土とも言われている。
しばらくするとタイ考古局が辺りを封鎖し、
その為緑絵大皿などは値段が釣り上がった。
この緑絵の作品を最初に発見し、入手しながら
それ以上突っ込んで広くアプローチしたり、
研究しなかったのは残念だった。
海外の研究者は現地に入り
緑絵の作品をいち早く研究対象に取り上げ発表している。
なんだかんだと言うけれど
我国の陶磁研究者たちは
あまりクリエイティブなことが苦手なようだ。
ダイナミックな研究姿勢が
こんなところにも必要だとつくづく思った。
そうそう、今年1月、
チェンマイの骨董屋に300万出すから
日本からこの作品を持ってきてくれ、
と僕の本に載っている鳥文様の大皿を指差された。
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