「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第59回
商品学(タイ編)
4. コインー金貨銀貨がザクザクと(II)

「へー、金貨か!」
といって堀屋と顔を見合わせた。
彼は僕の顔を見ながら、
あまりびっくりするな、値段が上がる、とウインクした。

運び屋の持ってきた金貨の1枚を受けとった。
それはAD2世紀頃のカニシカ金貨であった。
面白いデザインの人物が刻印されたもので
全部で15枚あった。
その包みだけは特別のものらしく、
運び屋が1枚ずつ自ら丁寧に広げた。

男はミャンマーの奥地から
100キロほど歩いてやってきたと言う。
僕がこの辺りで聞いた話では、
一番遠い国の運び屋はアフガニスタンからやってくると言う。
しかも彼らは歩いてくるらしい。
1985年ごろ、金や銀のコインだけでなく
宝飾品なども良いもの悪いものひっくるめて
重量×金銀相場の3倍
というのが大よその値段だった。
今でもそれで通用する地域が地方に行けばある。

コインは専門でなく散々迷ったあげく
傷の少ないものを3枚買った。
1枚大よそ5万円くらいだった。
僕は堀屋が金の純度をチェックする為に置いてあった
テスターの黒い石の上に金貨をこすりつけ、
上から希塩酸をスポイドで掛けた。
そうすると銅やその他の金属成分は溶けてしまう。
黒いテスターの上の金は殆ど溶けなかった。
この金貨はかなり純度が高く、
本物ということがわかった。

「どこからこんなもの持ってきたんだ?」
と問うと、ミャンマーの運び屋は
「ストゥーパ(仏塔)の中から出てきたものだ。」
と答えた。
ミャンマーの百姓は農作業の間に
古い崩れた寺院などを掘り返しているらしい。
目ぼしい物を見つけると
リュックに入れてタイまで持ってくる。
そんな話を聞いていたが
実際こうして遭遇したのはその時が初めてだった。

「だんな、全部買ってくれるなら1枚4万にしますが・・・」
と結構商売気を出してねばってきた。
コインは精巧な偽物があるので
僕は用心の為3枚にしておいた。
何せ国境での取引は相手が向こうへ行ってしまえば、
僕ら外国人は追いかけることが出来ないので全てがパー。
だから手堅くやらねばならない。

その他の包みは全て銀貨だった。
扶南(古クメール、6,7世紀頃)や
インドのものが混じってはいるが
殆どのものはミャンマーのコインだった。
中にインゴット状の国名のわからないコインも混じっていた。
銀は昔は貴重な貴金属であり、
きっと大金持ちの王様が
ストゥーパの中に入れたものに違いない。

こんな例は他にもあり、
アユタヤからは握りこぶしくらいの銀貨、
タイ東北部カンボジア国境から船形金貨や竿金など、
珍しいものが数多く見つかっている。
この辺りのコインは気長にやると
結構面白いものがこれからもまだまだみつかるだろう。

 

15世紀 銀打ち出し仏

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