| 第57回商品学(タイ編)
 3. タイの仏像 贋作の微笑み(II)
 13世紀末から15世紀にかけて、スコータイ朝はほぼ今のタイ国の領土を
 支配するようになると、セイロン島から仏教を将来した。
 顔は卵形で、しなやかな美しい体型の
 仏像を製作するようになる。
 国力が充実したのか、かなり大型の黄金仏などもこのとき作られている。
 現在バンコクのワット・トライミット(寺院)にある
 黄金仏などはこの時代に作られたものだ。
 高さ3メートル、重さ5.5トンの巨大な黄金仏は
 金の純度が60数パーセントあるといわれ、
 黄金の時価評価に直して100億円を超えるものといわれている。
 この仏像はスコータイの拝辞にあったといわれ、
 全体が漆喰でカバーされていて
 1953年、大嵐の際にクレーンが当り、
 剥落した漆喰の下から
 ギラリと光る黄金の肌が発見され
 バンコクに運ばれたといわれている。
 これほど大きな黄金仏を作り上げたスコータイ時代はタイの歴史の中でも飛びぬけて強力な王国であった。
 従って仏教美術の様々な作品は優美な作品が多い。
 タイの人々はこの時代の作品を好み、
 ちょっとした仏像でも結構高価である。
 ちょうど我々日本人が
 平安、鎌倉の仏教美術を好むのと似ている。
 ついで、14世紀後半から17世紀はじめ頃まで過剰な装飾を施したアユタヤ仏が生まれる。
 15世紀頃はスコータイの影響を濃厚に受けているが、
 16世紀以後は
 宝冠を頂いた独自の形を持つようになってくる。
 タイでは国立博物館や地方の美術館に行っても展示品の70〜80%は仏像だ。
 その他仏教関連の美術品を加えると
 展示品の殆ど全てが仏教美術に関するものだ。
 それだけにタイの仏像や関連美術品は優れたものが多い。
 タイ南部には7〜9世紀頃のシュリビジャヤの作品があり、
 東北部にはクメールやダヴァラヴァティの
 7〜9世紀頃のヒンドゥーや仏教美術の作品がある。
 また12〜13世紀にはロップリ時代と呼ばれる
 クメール後期の仏教美術がみられる。
 それらの像の魅力はここでは紹介しきれないが、タイ国の人々は仏教を厚い信仰心で守っている。
 それだけに良い像は昔から結構高価であって
 なかなか海外に出にくい。
 高さ15〜20cmくらいのコンディションが良い
 14世紀頃のスコータイ仏など100〜200万もする。
 40〜50cmぐらいのモノになると
 強気のディーラーは1000〜1500万くらいの値をつけるのだ。
 日本でもちょくちょく店頭で見かけるが殆どの作品がコピーかコンディションの悪いものだ。
 気をつけよう。
 また持ち出しも厳しい制限が課せられている。
   
           
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            | 14世紀 スコータイ仏 | 7、8世紀 ダヴァラヴァティ仏立像 |  |