第37回
商品学(中国陶磁編)
5.海を渡った唐三彩 理由ありげな琉璃廠の骨董屋
食事が終わって
落ち着いて北京飯店のレストランをゆっくりと見渡した。
黒人、ロシア人、東ヨーロッパ系と思われる人たち、
それにキューバの人もいたように思う。
皆、暑いのにきちっと背広を着てネクタイを締めているので
VIPもいるのだろう。
彼らのテーブルの上には飯を食ったような形跡が殆どない。
ちょこっと食って
連れとなにやら忙しげに打ち合わせをしているのだ。
一人でテーブルに山のように新聞を積み上げて、
目を通しながらメモを取ったりしている人もいた。
僕みたいに一生懸命食べることに執着している人は他にいなかった。
ロビーに出ると
「サッ」という感じでこちらを向いた人がいた。通訳だった。
「先生、これから琉璃廠に行きます。
クルマを表に回しておきますが、何分後がよろしいでしょうか」
と聞く。
僕の行動の全てが彼によってコントロールされているみたいだ。
部屋に入って出かける用意をし、再びロビーに下りて外へ出た。
相変わらず馬糞色の制服をつけた人民開放軍の兵士が
おもちゃの兵隊のような格好で立っていた。
記念にと思い写真機を向けると
硬直した顔でくるっと後ろを向いてしまった。
時間が来たので後ろを向いたのかと思い、
兵士の正面へ回り込みレンズを向けると、
またくるっと回ってしまった。
マニラのリサール公園の儀仗兵だったら
結構ポーズなんか取ってくれて
ついでに手を伸ばしてくるのにと思っていると
通訳が「規則ですから」といって暗に写真を撮るなという。
まあどうでもいいが
兵士の顔には明らかに敵意のようなものが感じられた。
フィルムももったいないので、とってもしようがないと思って
紅旗に乗った。
僕らは人々でごった返す琉璃廠の通りを
始終クラクションを鳴らして人々をかけ分け、
目的の店に向かった。
店はかなり年代物の建物の一角にあった。
連絡がしてあったと見え、中から40歳くらいの男が出てきた。
この人は骨董を扱う商人のようだが結構偉そうにしている。
通訳が僕が日本人で骨董を仕入に来たといっているのに
別に頭を下げるわけでもなく、
中に入れという感じで
自分からすたすたと店の奥に入ってしまった。
男の後に僕が続いた。その後に通訳もついてくる。
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