第16回
実務編(6)
危ない中国骨董商との話
世界で最もシビアな商人は
アラビア商人、イン・パキ商人、中国商人、
それに僕には馴染みがないがユダヤ商人だといわれている。
彼らは価値観の違う異民族との商売を行った結果、
自己主張の強いビジネスが習慣となったのではないかと思う。
僕が経験した中国骨董商とのシビアな取引の一幕。
香港で手広く骨董業を営む王さん(仮名)という男がいた。
彼の年は70くらいで色々な持病を抱えていた。
おおような中国の大人と言う感じで初対面の僕と向き合った。
その時は結構良いものを安く買い付けることができたので
僕はとてもよい気分で
「王さん、また来月も来ますから
良いものを取り揃えて置いてください」
「あなたいいセンスしてる。
これから伸びる人だと思うから応援するよ」
と別れた。
翌月連絡を取って香港啓徳空港に午後三時に到着すると、
迎えに来てくれと言ってなかったが
王さん自身が出迎えに来てくれた。
連れ立って外に出ると大型ベンツがドーンと停まっていた。
そしてその取引もまた素晴らしい成果があった。
北宋磁州窯鉄絵梅瓶、明赤絵の大鉢、元染の皿など
中々マーケットに出回らない逸品だった。
「王さん、どうしてこんなに素晴らしいものがここに来るの?」
と不思議に思って聞いた。
「向こうに強力なコネクションがあって
野菜のトラックに積んで持ち込むんだよ」
その時染みが浮いた老人の顔から
意外としたたかな修羅場をくぐった一面がちらりと覗いた。
しかしそんな顔はすぐに柔和な中国大人の顔つきに戻った。
終わって王さんに食事を誘われた。
レストランには僕のためにテーブルがセットされ
至れり尽くせりの接待を受けた。
山海の珍味を前に王さんが時々立ち上がって
「乾杯!」と言って飲み干した盃を
僕を初めテーブルに着いた人たちに見せる。
帰りの車も「この車を使ってください」と言い、
迎えに来てくれた大型ベンツを僕のために譲ってくれて
自分達はタクシーで帰っていった。
「いい人だな。」
それに取引の間、万一この品物に何か問題があれば
責任は私が持ちますといって保障をしてくれるのだ。
そんな取引がその後5,6回続いた。
彼もその間に日本に2度も足を運び、
持ってくるものも、中々良いものを持ち込んできた。
そんなある日僕の店に電話がかかってきた。
(以下次号)
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