誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第150回
難しいものは面白い

勉強なんて面白くない、と子供たちはいう。
最高学府の大学生までもが
同じ不平を鳴らしているのだから笑ってしまう。
そんなに勉強がいやなら、大学など行かなければいいのに、
とふつうは思うが、ふつうでない人たちは思わない。
勉強ぎらいは決まってこう言う。
「だって、楽しくないんだもん」。
そりゃそうだ。
たとえば歴史を暗記ものと思っているうちは、
歴史なんて少しも面白くない。
私だって、受験用に年代を丸暗記しているときは、
「こんなバカなことをやってて、いいのだろうか」
と、絶えず自問していた。

歴史学者ではないので、あまり偉そうなことはいえないが、
歴史の面白さがわかってくるのは、
ある程度歳が行ってからだと思う。
世の中の仕組みやら人間というものが漠然と見えてくると、
もっと深く知りたくなり、それを歴史に求めようとする。
なぜなら歴史とは人間学の謂いで、
どの時代を切り取っても、
人間いかに生きるべきかの深遠なる哲理に満ちているからだ。
その宝の山を前にして、
私たちは受験のためと称して、
ただひたすら年代を丸暗記してきた。
石器時代からの通史をむりやり頭に詰め込んできた。
そして、何も残らなかった。

だからといって、勉強はすべからく楽しかるべきもの、
と決めつけるのは間違っている。
楽しいことは楽しいが、「苦」のあとの「楽」であって、
一足飛びに楽しくなるわけではない。
たとえば体操競技。
東京オリンピックではさかんに
“ウルトラC”という言葉が使われた。
当時、難度はABCしかなく、
Cより難しい技という意味でそう呼ばれたという。
今はどうか。
難度はABCDE、スーパーEの大きく6段階が設定され、
スーパーE難度の技が一番難しいとされている。
つまり、難度はウルトラCからスーパーEまで進化した。

体操選手にしてみれば、
C難度の技など、今更やさしすぎてつまらないだろう。
山下跳びなどやっても誰も振り向くまい。
やるならE難度、できればスーパーEに挑戦したい。
難しいがやりがいがあり、
何より難しいことに挑戦するのは面白い。
それも難しければ難しいほどいい……
と、体操選手であれば、例外なくこう思うはずだ。
そう、体操でも数学でもゴルフでも、
難しいことは面白いのである。
日本の学校教育に決定的に欠けているのは、
この単純にして明快な事実なのだ。


私の独断と偏見に満ちみちた当コラムは、
今回をもってお開きにいたします。
半年間にわたってのご愛読、まことにありがとうございました。

                             嶋中労


←前回記事へ 2005年12月2日(金) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ