| 第81回車庫入れ、大っきらい (その一)
 男女の違いをつぶさに再確認したくなったら、奥方に車庫入れか縦列駐車をさせてみればいい。
 「なんでこんな簡単なことができないんだ、こいつは。
 おいおい、ハンドルを切る方向が逆だろ。
 そんなに据え切りをやったら足回りが歪んじゃうよ……」。
 見ているだけでハラハラドキドキ。
 しまいにはよそ様の車を傷つけられるのが怖くなり、
 「もういいから代われ!」
 と実地指導をあきらめてしまう。
 そんな経験をお持ちの亭主族はいないだろうか。
 《一姫二トラ三ダンプ》とはよくぞいったものだ。女性からすれば不本意で、とんだ言いがかりに聞こえようが、
 男性ドライバーなら誰でも、
 傍若無人のダンプカーや酔っぱらい運転などより、
 姫君の運転のほうがはるかに怖ろしいことを知っている。
 高速道の入口でもたついているのはいつだって女だし、
 逆に大トラ運転も顔負けの
 無理な割り込みや車線変更をしてくるのも、やっぱり女だ。
 狭い交差点で車がつかえてしまうときも、
 たいてい女性ドライバーが右折しようとするケースで、
 センターラインを多少飛び出してでも
 後続車が通れるくらいのスペースを空けてやるという、
 ドライバーが当然心すべき配慮がもののみごとに欠落している。
 教習所で教えられたとおりを実践して何がわるい、と女たちは反発するが、
 遵法精神の権化と化し、
 教条主義のかたまりみたいになってしまうと、
 かえって混乱と渋滞を招き、危険なこともあるのだ。
 警察からお叱りを受けそうだが、
 交通ルールというものは適度に守り、
 適度に破るべきものなのである。
 片側一車線で、法定速度を律義に守り、
 スムーズな車の流れを阻害しているケースもある。
 私などは迷わずクラクションを鳴らし、パッシングで威嚇するが、
 気の強い姫君はいっこうに動じるようすもなく、
 逆に睨みつけてくることだってある。
 「法定速度を守っていて、どこがわるいのよ!」。
 例によって得意の正義をふりかざす。
 さて、女性が車庫入れや縦列駐車を苦手とするのは、男脳と女脳の違いに因る、という説がある。
 その説によると、一般に空間認識が得意なのは男で、
 女は自分が今、全体の中でどの位置にあるのか認識する能力に
 やや欠けるという。
                     (次回つづく) |