| 第73回異性は異星人?
 30年ぶりの同窓会に出ると、女同士は、
 「カヨちゃん? あんまり若いんで見違えちゃった。
 スタイルも昔のままだし、まだ充分30代で通るわよ」
 などと見えすいたお世辞をいう。
 これが男同士だとまるで遠慮がない。
 「ずいぶん頭のてっぺんが薄くなったじゃないの。
 亡びゆく草原ってわけだな」
 「大きなお世話だ。
 お前だって妊婦みたいな腹のくせして(笑)……
 ところでY男のやつ、どうしてる?」
 「Y男? やつは死んだよ。
 おととい葬式に行って来たばかりだ」
 などと、与太話がとんでもない方向にいってしまう。
 そしてしばらくすると、
 死んだはずのY男がひょっこり会場に現れたりして……。
 女同士の会話は、聞いていると互いに褒め合ってばかりで、どこか気味がわるい。
 甘い言葉やお世辞の応酬が倦くことなく続き、
 会話そのものが糖衣にまぶされたような
 上っ調子のものになっている。
 女は相手のことを決して貶さない。
 肚の中でこん畜生と思っていても、
 口をついで出てくるのは砂糖菓子のような
 甘ったるい褒め言葉ばかり。
 言葉は女の心の中から紡ぎ出されたものではなく、
 まったく別のところから発せられてくる。
 仲のいい友達同士と思われていても、
 実際は激しく憎み合っていることだってある。
 なぜこうも思っていることと
 発せられる言葉が裏腹なのかというと、
 人と対立することを極度に怖れるがためだ。
 だからひたすら褒め合うことで互いの親和を築こうとする。
 男は逆で、髪の薄くなった男をハゲ呼ばわりしたり、ジジむさい格好を貶し合ったりして喜んでいる。
 まるで子どもだが、
 悪態をつき合うことが互いの親密度を確認するための
 セレモニーになっている。
 だから異性同士の会話になると、
 友愛の示し方が互いに180度異なるため、
 どうしてもちぐはぐな会話になってしまう。
 一方は相手と同じ考えであることを強調したがり、
 もう一方は相手と違う考えであることを強調したがる。
 また女は婉曲でソフトな語り口を好むが、男は多少乱暴でもズバリと核心を突くような物言いを好む。
 よけいな粉飾を施した回りくどい言い方がきらいなのだ。
 恋愛中はこうした男女間の会話スタイルの違いさえも
 かえって魅力的に思えたりするが、
 熱が冷めると、急速に居心地のわるさを感じてしまう。
 そして互いにこう思うようになる。
 「女(男)は人間じゃない。別の星から来た生き物なのだ」
 |