第52回
オンナと機械オンチ (その二)
私はいまだに
一眼レフの絞りとシャッターの関係の何たるかがわからない。
それくらい機械に弱いってことだが、
女の機械オンチぶりはそんな生やさしいものではない。
これはヤマダ電気の店員からじかに聞いた話だが、
デジカメを買ってくれた中年のおばさんに、
くどいくらい使い方の説明をしてやったところ、
大きくうなずいたおばさんは、最後にこう尋ねたという。
「ところであんた、フィルムはどうやって入れるの?」
この程度のことで驚いていてはいけない。
そもそも女には車がどういう仕組みで走るのか、
鉄の塊である飛行機がどうして空高く飛べるのかがわからない。
もちろん私にもサッパリだが、
表向きはわかっているような顔をする。
男の機械オンチは単なるバカと見なされるからだ。
女の「わかんなーい」は、
「おうよしよし、苦しゅうないぞ」で済むけれど、
男はそれでは済まず、
「なにバカ言ってんだ。ちったあ勉強したらどうだ!」
と逆に怒られてしまう。
雪道でチェーンが巻けずに困っている娘があれば、
男は必ず助けてやろうと思うものだ。
が、相手がむくつけき野郎だったり
女を捨てたおばさんだったりすると、
見ないふりして通り過ぎてしまう。
だからというわけでもないが、
助けが期待できない以上、
男は必然的にメカ(チェーンはメカだっけ?)に
強くならざるを得ないのだ。
「私って、機械にきらわれてんのよねェ。
さわると決まってフリーズしちゃうんだから」
これもまた女たちの決まり文句だが、
ほんとうはオンチでもなければ、きらわれているわけでもない。
ややこしい操作マニュアルを読むのがめんどうなだけなのだ。
ついでにいえば、
困ったときには必ず男が助けてくれる
と確信しているためなのである。
過日、知人が免許取りたての女性を乗せて山道を走り、
下り坂ではエンジンブレーキを利かせたほうがいい、
という話をしたら、
「エッ? うちの車には付いてないわよ」
と真顔で詰め寄られたという。
で、彼は、
「そりゃ大変だ。すぐメーカーに文句言ったほうがいい」
と親切にアドバイスしてやったそうだ。
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