第402回
悪い≪デフレ≫を生きる知恵・3
この未曾有のピンチをチャンスに変えられるか?
僕が「週刊ポスト」の編集長で、
30年前の円高不況に見舞われたときに、
邱永漢さんの事務所の門を叩き、
「ピンチをチャンス」に変えるための
実践的処方箋のエッセイを書いていただいて
あれよ、あれよという間に100万部の
ナンバーワン雑誌にのし上がってしまった、
という話の続きです。
やがて邱永漢さんの予言のとおり、
付加価値を生み出す日本経済は絶頂期を迎え、
「週刊ポスト」の新年号は発行部数150万部。
景気回復とともに企業の広告もたくさん入るようになって、
実売100万部、年間売上100億円という
ちょっとした中企業並みの業績を上げる
怪物雑誌となってしまったのです。
「ピンチをチャンス」変えるという、
ちょっと、僕の自慢めいた話を書いてすみません。
しかし、ここで強調しておきたいのは、
この連載の中、邱さんから教えて貰った
まさに「不況に克つ」――
大事な処世訓があったからです。
それは「上有政策 下有対策」というキーワードでした。
ご存知の方もいるでしょうが、
「上有政策 下有対策」とは、
「上に政策あれば、下に対策あり」と読みます。
「お上(国家)に政策があれば、
庶民には抜け道がある」といった、
したたかな処世の知恵です。
日本の評論家の中には、こうした処世法を、
私利私欲に走る「無法の知恵」と断罪する向きがありますが、
日本の数倍も混乱の歴史を繰り返してきた中国では、
いくら権力者が変わろうが、
大衆は先手を打って対応していく――
そうした工夫こそ、
庶民のしたたかな知恵として
守られてきたわけです。
続きはまた明日。
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