第139回
年末の心づけは今も健在です
昔からフランス社会には、
アパートの管理人であるコンシェルジュ
(通いではなく住み込みで、かつてはポルトガル人が多かった)や
ゴミ収集の人、郵便配達の人に年末の心づけを渡す習慣があります。
今、アパートのコンシェルジュといった職業は
ほとんど消滅しつつあると聞きますが、心づけは健在です。
前にも紹介したピーター・メイルの「プロヴァンスの12か月」中、
12月の章にこの心づけ
(彼は「クリスマスのチップ」と表現しています)に関する
描写がありました。でも10年も前のこと。
こうした習慣に対する実感はまったくありませんでした。
セネでの初めての年末。
ある日の午後、トクトクトクと扉をノックする音。
開けるといつもの郵便配達の女性が
大きな鞄(中に写真柄の違うカレンダーがいっぱい詰っていた)を
持って立っていました。
「カレンダー持って来たんだけれど…」。
あっ、これかも、とその意味はすぐにピンときました。
でもいくら渡せばいいか(書いてなかったし)見当がつかず
困ったのを覚えています。
他に訪れたのはヴァンヌの消防士。
本の通り、
彼らの活躍を表す写真が入ったカレンダーを持って現れました。
セネに消防署はなく、
この辺一帯はヴァンヌの管轄になるようでした。
前2者は毎年のことですが、清掃局の人は一度も来ませんでした。
飲酒運転取り締まりが厳しくなっている折り、
赤ワインやシャンパンを振舞われて
楽しいチップ集めもままならなくなったからでしょうか。
それとも、もとからカレンダーはなかったようだし、
世の中せちがらくなったのでしょうか。
フランスでは会社によって
暮れのボーナスはあったりなかったりのようですが、
こうした1年を締めくくる心づけの習慣は
全国的に浸透しているようです。
両親のところは、週2回、家の掃除を人に頼んでいます。
訳すと「通いの家政婦」のようになりますが、
日本の家政婦さんとは違います。
日本だと「家事の手伝い」となって料理や洗濯までするようですが、
フランスでは家の掃除だけが仕事です。
フランス語でファム・ドゥ・メナージfemme de menageといいます。
ノエルNoel(クリスマスのフランス語)の前、
彼らは彼女への支払いに何割か上乗せして、
「お疲れさま、また来年もよろしくね」の気持ちを伝えます。
また家族内でのノエルのプレゼント交換とは別に、
お世話になった方へのお礼として
年末にプレゼントをすることもあるようです。
といっても日本の「お歳暮」的な慣習ではありません。
あくまでも個人的な気持ち表現の一つといったところです。
今年は最後にもなるので、
いつも菜園の実りを分けてくださるお隣りに、
お礼を込めて何か届けなければと思っています。
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