第247回
先入観の塗り替えをはかる『再建屋の元祖―新説二宮尊徳』
『再建屋の元祖―新説二宮尊徳』のまえがきの続きです。
「あれから十年余りたって、
サラリー・ローンの全盛時代になった。
相互銀行や信用金庫や信用組合が
『経済観念のある人』の金融機関であるのに対して、
サラリー・ローンは『経済観念のない人』
を相手の金融機関である、と私は説明しているが、
こういう新しい金融機関が出現したのも、
もとより豊かな世の中になって、
かっては質草を持っていかないと
お金を貸してもらえなかった人々が
水面から上に浮かび上がって、
未来の収入を担保に入れるだけで
お金が借りられるようになったからである。
いともお金が簡単に借りられるようになったおかげで、
さまざまな悲喜劇が生まれているが、
いまもし二宮尊徳が現存していたら、
何と言って怒鳴るだろうか。
お金がありあまるようになって、
お金を貸してもらえる有難さが半減してしまったので、
尊徳のそうした面よりも、むしろ、
家政や藩政の建て直しをした面が
クローズ・アップされてきた。
会社が倒産に追い込まれると、
現代では早川種三とか坪内寿夫という人たちに
お呼びがかかる。人読んで『再建屋』という。
国家財政も年々、15兆円におよぶ大赤字で、
今年(昭和58年)は国債の発行高が
100兆円を突破する年にさしかかっている。
国家にも遠からず『再建屋』の登場が
要請される時期に来ている。
日本の歴史上でこうした『再建屋』の元祖ともよぶべき人は
やはり二宮尊徳であろう。
この際、いまの人たちにわかりやすいように、
『再建屋の元祖―新説二宮尊徳』と題名を改めた。
徳川の昔から日本にも、偉い再建屋がいたことを
知っていただければ幸いである。」
(『再建屋の元祖―新説二宮尊徳』の「まえがき」)
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