第215回
「実際に自分で賭けてみなければ気がすまない」
邱さんは日米の貿易摩擦が激しくなるであろう、
その結果、日本の企業がアメリカに進出するのではないか
と予想し、その考えを確かめるために
アメリカで不動産投資を試みるようになります。
「私の最初の予想では日本は多分、
すぐお向かいのカリフォルニア州に集中するだろうと考えた。
ことにロスアンゼルスからサンディアゴの間は、
気候風土的にも、土地の広さからいっても、
日本企業の一大工場地帯を形成するには向いている。
そう思ったので、まずリトル・東京に小さなビルを買い、
続いて、オレンジ・カウンティに
小さなショッピング・センターや、
小さなコンドミニアム(マンション)を持つようになった。
これはお金儲けというよりは、
自分が予想した動きが正しいかどうかを確かめるために、
実際に自分で賭けてみなければすまないという
持って生まれた気質から出たものである。
しかもその場合、日本円をアメリカに運んで
アメリカの不動産を買ったのでは話が面白くない。
1ドル250円で日本円をドルに換えて、
アメリカで不動産に投資をして、
仮に値段が倍になったとしても、
1ドルが125円まで下がってしまったら
(そういうことも充分、あり得ると想定しなければ
海外投資はすすめられない)、
元の木阿弥になってしまうからである。
だから私は資本金分くらいの資金は日本から投資するとしても、
それ以外の借入金はすべてアメリカの銀行で借りなければ
意味がないと思っている。
アメリカでお金を借りて、年率12%とか、
13%の高い金利を払い続けることはまことにしんどいことである。
しかし、アメリカの大半の人々は皆、
この高金利に耐えているのだし、
自分もそうしなければアメリカ人の気持ちはわからない。
またアメリカで再度、インフレがドッと表面化したときに
うまくその恩恵にあずかることもできない。
自分としては、
別にそんなにお金が欲しいと思っているわけでもないのに、
こういう勝負にでなければならないのも
身から出た錆と言ってよいのであろうか」
(『失敗の中にノウハウあり』)
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