第208回
『節税の実際』に「収入の多国籍化」が付加されました
Qブックス版の一冊として昭和58年に
『節税の実際』を再版するに際し、
邱さんは「収入の多国籍化」の一章を付け加えました。
「税法は歌と同じように、世につれて変わるので、
今後もまだ次々と変わっていくことは間違いないが、
昭和49年にいっぺん手入れをして
『新節税の実際』と題して、改訂版を上梓した。
今度『Qブックス』におさめるにあたって再読したところ、
すでに9年の年月が経過し、税法の内容も変わったし、
何よりも税法をとりまく環境が一変してしまっている。
高度成長の時代と、昨今のような世界的な同時不況の時代では、
皆の関心の的も一昔前とは違ってきている。
たとえば、9年前には、不動産の税制が重課の方向に
動いてきたので、譲渡所得税が注目の的になったが、
昨今のように、不動産の値段ばかりあがって、
売却をしようものなら、少々くらいの小細工では
逃げ場がなくなってしまった。
あとは『等価交換』とか『圧縮記帳』くらいしか
対応の方法がなくなっている。
それからもう一つ、何年も減税がおこなわれなかったために
名目賃金のあがった分だけ累進課税の対象になり、
実質収入は逆に減税してしまうという奇現象も生じている。
こうなると、高率課税を避けるためには
資産の分散をするほかないし、そのために
『家族会社』を新しく設立する人が最近は多くなってきた。
また戦後も40年近くたったので、
世代の交替期にさしかかっており、
家族会社の株価をじかで評価されると、
莫大な相続税をとられ、相続が思うに任せないで
困惑している人たちが続出している。
いまほど相続税対策が人々の関心を集めている時代も
ないといってよいだろう。
こうした新しいニーズに合わせたテーマが、
この本には15年も前からとりあげられているわけだが、
こんど再改訂版を出すにあたって、
『収入の多国籍化』に関する一章を書き加えた。
おそらく、これから21世紀に向かって、
日本と諸外国の距離はますます狭まってくるから、
国から国への、人と金の動きはますます移動し、
その分だけ税金の関係も入り組んでくることであろう。
そういう視点から、税務に対するチエを働かせていただければ、
新しい節税の世界が忽然とひらかれてくるのではないかと思う。」
(Qブックス版『事業家・資産家のための節税の実際』まえがき)
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