第198回
『子育てはお金の教育から』は邱家の実地体験記
「30年前と今の一番大きな違いは、豊かになったことであり、
豊かさはお金が尺度になる。
したがって、親も子も、
お金の扱い方を間違えないことが大切であり、
『お金をふんだんに使いながら成り上りと人に笑われたり』
『お金にふりまわされて気がおかしくなったり』
『お金のことで家中に争いが絶えなかったり』
するのは恥ずかしいことと言わなければならない。
私は、たまたまこの4半世紀『お金のセンセイ』をつとめてきたし、
社会生活をしていくうえでお金の扱い方を間違えないことが
いかに大切であるかということを痛感してきた。
私たちはまた、日本の学校教育は、
子供たちの人間形成にとって不十分だと思っていたので、
金銭とか礼儀作法とか道徳観念については、
自分たちの家庭で実地に教えてきた。
といっても、堅苦しい説教をしたわけではなく、
たとえば、食卓をかこんで
『オヤジが死んだときはどうすればよいか』
『オヤジが倒産したときは、一家がどうなるか』
といった話を盛んにやったのである。
まだ幼かった頃は、
『パパ、死ぬ時は借金返してから死んでね』とか、
『倒産したらどうしよう』と青くなったりしたが、
そのうちにいつまでたっても死にも倒産もしないので
『そんなことを言って、また僕たちをおどかしているのでしょう』
と狼少年ならぬ狼オヤジ扱いされるようになってしまった。
しかし、知らず知らずのうちに金銭教育を受けたせいか、
子供たちは一人前になって社会に出ると、
銀行の仕組みとか、税法の仕組みを素早く理解し、
借金の効用とか、信用とは何かといったことが
説明しなくとも頭に入るようになった。
この本の末章においてもふれたように、
『あまり大人物にはなれそうもないが、
人様に迷惑をかけない子供』には育ったように思う。」
(『子育てはお金の教育から』まえがき)
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