第162回
インフレに抗する考え方をとく編著『大口・小口の投資読本』
『大口・小口の投資読本』は
昭和54年12月に発刊された邱さんの監修書です。
邱さんのほか、証券会社の調査部の人、宝石会社の人、
古書や切手のコレクター、ゴルフ会員権の専門家、
骨董の専門家などがそれぞれの得意の分野のことについて書き、
それらの作品が集められた書です。
この当時はインフレ傾向が進んでいた時代ですから邱さんは
「インフレ時代に要求される投資に対する基本的な考え方」
と題した作品を掲載しています。
この作品は30ページ足らずの文章ですが、
インフレ基調の経済に向かうべき合理的な態度が
簡潔に紹介されています。
まずお金を貯めることの重要性です。
邱さんは色紙を頼まれたときよく
「貯蓄十両、儲け百両、見切り千両、無欲万両」と書き
このことからもわかるように、
貯蓄の威力をそれほど評価していないけれども、
どんな金持ちも最初は貯蓄からがスタートするものだし、
お金を貯めるには強い克己心が必要だから
貯蓄の目的や目標を明らかにし、『鉄の意思』をもって
お金を貯めるという第一目標を達成することが
必要だと述べています。
そして『インフレは経済界の矛盾を緩和するために、
人類が発明したもっとも抵抗の少ない中和剤であり、
更にもっと効果的な代用品が出現しない限り、
今後も継続して採用される」ととらえています。
さて貯金は(1)老後のため(2)不時に備えて
(3)家を建てる(4)独立資金(5)子供の教育費
(6)結婚(7)海外旅行など
多岐にわたる目的をもつものですが、
お金を貯めて銀行に預けておく形式だけでは
貯金の本来の目的を達成できないので、
十数年前から『借金学入門』とか『銀行とつきあう法』で
提言してきたように、借金を財産づくりの手段の一つとして
応用すればよいと主張しています。
また日本人が海外投資に従事する時代になってきているので
個人の投資も国際的視野にたって行うことが
必要になっているとの主張も盛られています。
いまはデフレの時代ですから、
ここに紹介した対処法と対比させつつ、
今の時代に必要な経済的態度を探求したいものです。
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