Qさんの本を読むのが何よりスキ
という戸田敦也さんがQライブラリーのガイド役をつとめます

第138回
一貫して変わらない経営の原則を述べた『成功の法則』

『成功の法則』は昭和47年から48年まで
『マネジメント誌』に「ビジネス論語」と題して連載し、
昭和48年4月に日本能率協会から新書版で
単行本として出版されたものです。

「本書は、私の遍歴の中から体験的に生まれてきたものである。
金儲けや株式投資に関する本をこれまで結構書いてきたが、
自著を献呈する時、
私は署名のほかに2、3行の短文を書き添える。
中央公論の嶋中鵬二氏に言わせると、
私のそれらの短文はちゃんとした警句になっているから、
『金儲け論語を書きなさいよ』としきりにすすめた。

たまたま『マネジメント誌からも
似たような趣旨の申し込みをうけたので
連載を引き受け昭和47年から48年にかけて
『ビジネス論語』と題して15回にわたって連載した。
金儲けがビジネスにタイトルを変えたのは、
理研光学がリコーに社名を変更したような
『マネジメント』誌編集者の感覚に私が賛成したためである。」

ところが出版間際になって、同じ題名の本がよそからでたために、
改名を迫られ「邱永漢・成功の法則」という題名になりました。

「私は経済の現象を観察していて、その中に流れている傾向を、
一つの法則としてとらえる癖を持っている。
帰納的思考を直感でとらえる遊びとでも言うべきものだろうか。」
この邱さんの思考の遊びで31講の法則が整理されました。

この『邱永漢・成功の法則』は初版から10年ばかりたった
昭和59年にQブックス・シリーズの一冊として
『成功の法則・金儲け論語・31講』と題して再版されました。
その「あとがき」で邱さんは書いています。
「訓戒めいたことを語るのは、私の性に合わないのだが、
大学の講義みたいに、31講に分けて講釈した形をとると、
すぐにも腐ってしまうような話をするわけにもいかないから、
どうしても、原則論を述べてしまう。
つまり私たちの日々、変化してとどまることを知らない
生活の中を流れていながら、一貫して変わらない原則となると、
十年たって読みかえしてみても、
不思議にも少しも古くなっていないのである。
というよりも、書いた時にすでに新しくないことを書いていて、
その時は気がつかなかっただけのことかもしれない。」
(Qブックス版『成功の法則』)

邱永漢作品は1冊、1冊それぞれ個性をもち、
また魅力も持っていますが、
私はこの本から有益なヒントをいただき、
ずいぶん役に立ったという実感がありますので、
仮に復刻の相談を受けたら、イの一番で推挙するのが
この『成功の法則』です。


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2003年1月12日(日)

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