第107回
スロー・スターターの『誰も教えてくれない女の商売成功の秘訣』
昭和43年に邱さんは、いまに多くの人が独立して
仕事をやるようになるに違いないから、
その人たちのために分かりやすい
商売の手引書を書こうと考え
『誰も教えてくれない女の商売成功の秘訣』を出版しました。
この本の中身は四部に分かれていて、
第一部の「女性が事業界へ進出するときが来た」は
『婦人公論』誌に書き、
第二部「商売を始める前にしっておくべきこと」
第三部「後で泣かないために」
第四部「成功の声はどん底にいる時にきこえてくる」
この三部は当時、グラフ社がつくっていた
『マイライフ』誌に掲載しました。
これで1冊分のボリュームになったので、
日本経済新聞社の出版部に持ち込み出版しました。
この作品の売れ行き状況について邱さんは書いています。
「確か初版1万部だったと思うが、
売れ行きが一向にパッとしなかった。
私の大抵の本だと、すぐ再版、三版と声がかかるのに
さっぱり反応がない。
やはり『女の商売・・・・・』とつけたのが
いけなかったのかなあと思ったりした。
のちにこの本を中国語で台湾で出版した時も
全く同じ反応だった。
台湾の出版元があわてて、
『小資本でもできる商売の秘訣』という帯をつけて
店頭に出したら、すぐに売れはじめた。
『女の商売・・・・・』というタイトルを見ると、
男の方は自分に関係がないと思って手をださないのかもしれない。
あるいはもともと商売をやる女の人が
あまり多くないかもしれない。
私は自分の計算違いを反省するよりほかなかった。
しかし5年たち、10年たつうちに、
『女の商売』はやがてお客を呼ぶようになり、
くりかえし版を重ねるようになった。
女性で実業界に進出する人が、着実にふえてきたようだし、
男の人と伍して競争するようになれば女性といえども、
経営をどうしたらよいか
勉強しなければならなくなったからである。」
(「人生、途中下車でもいい」/『若気の至りも四十迄』所収)
この『誰も教えてくれない女の商売成功の秘訣』は
のちにQブックスの一冊としても再版されます。
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